投首なげくび)” の例文
『矢筈草』いよいよこれより本題にらざるべからざる所となりぬ。然るに作者にわかまどうて思案投首なげくび煙管キセルくわへて腕こまねくのみ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
昨日きのうは折目も正しかったが、露にしおれて甲斐性かいしょうが無さそう、高い処で投首なげくびして、いた草臥くたびれたさまが見えた。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
退しりぞ投首なげくびなし五日の中に善惡二つを身一つにして分る事のいとかたければ思案にくれるに最前さいぜんよりも部屋の外にて二個ふたり問答もんだふ立聞たちぎきせし和吉は密と忠兵衞のそばへ差寄りたもと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その様子を視て、さすがの文三も今は殆ど志をくじき、とても我力にも及ばんと投首なげくびをした。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ご自分の悪事を言われたくないばかりに、やたらに他人の噂を大事件のように言いふらし、困ったことさなどと言って思案投首なげくび、なるほど聡明そうめいな御態度です。醜聞の風向を、ちょいと変える。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
と、思案投首なげくびていだったのです。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
されども母は投首なげくびして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
吹く者と知なば戀路こひぢさめ息子せがれ吾儕わし能樣よきやうに言ゆゑ和郎そなたは音羽町へ早くゆきねとせり立られ忠兵衞今は理の當然たうぜんせまられたれば一句も出ずちから投首なげくび腕組うでぐみして進まぬ足を進めつゝ音羽を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「悪くするとかたき出会でっくわす。」と投首なげくびする。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)