たはむれ)” の例文
新字:
われは夫人に會はんことの心苦しさを訴へしに、公子は唯だたはむれに、そは説法なくては濟まぬならん、されど説法を聽聞ちやうもんせんもおん身に害あらじと答へぬ。
刺槐はりゑんじゆよ、い匂がして、ちくちくしてくれるのが愛のたはむれなら、後生ごしやうだ、わたしの兩眼りやうがんりぬいておくれ、さうしたら、おまへの爪の皮肉も見えなくなるだらう。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
幼君えうくん御機嫌ごきげんうるはしく、「よくぞ心附こゝろづけたる。かねてよりおもはぬにはあらねど、べつしかるべきたはむれもなくてやみぬ。なんぢなんなりとも思附おもひつきあらばまをしてよ。」と打解うちとけてまをさるゝ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
掻きさがしつつ、たはむれれつ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
婦人の一人はたはむれに、さらば我はこの黄金こがねの鎖を置かんと云ひて、言ふところの品を卓上になげうてり。
幼君えうくんきつとならせたまひて、「けつしてづることあひならず一生いつしやう其中そのなかにてくらすべし」とおもてたゞしてのたまふ氣色けしきたはむれともおもはれねば、何某なにがしあまりのことにことばでず、かほいろさへあをざめたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
或る知人のたはむれに、アントニオはあやしき子なるかな、うみの母をば愛するやうなれど、外の女をばことごとく嫌ふと見ゆれば、あれをば、人となりて後僧にこそすべきなれ