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懷錢
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ふところせん
彼は
原料の
藁を
勘次に
要求せずに五
錢か十
錢位づゝ
懷錢を
出して
能く
選つた
藁を
其處此處で
買つて、
穗先の
處を
持ては
肩から
打つ
掛けてがさ/\と
背負つて
來るのである。
庭の
騷ぎは
止んで
疾風の
襲うた
如く
寮の
内は
復雜然として
卯平を
圍んだ
沈鬱な
空氣を
攪亂した。
軈て
老人等が
互の
懷錢を
出し
合うた二
升樽が
運ばれて
酒が
又沸された。
酒の
座は
圍爐裏に
近く
形られた。