ゆる)” の例文
(私はただ今、大事なお研物とぎものを仕かけておりますので、しばらく母と話していて下さい。仕事をすませば、いくらでもゆるりと話しますから)
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあ危険は過ぎましたじゃ、市之丞様もゆるりとなされ。わしはの、実際まことにあなた方が可愛く思われてならぬのでのう」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ああ、もし」と誰かが手をあげた、「失礼ながら、そこのところをもちっと、ごゆるりとお聞かせ下さらぬか」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
ボオイの獨逸人が物柔かな佛人に代つて初めて私はゆるやかな氣分になつた。茶とパンを室へ運ばして食べた。
巴里まで (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ボオイの独逸ドイツ人が物柔かな仏人に代つて初めて私はゆるやかな気分になつた。茶とパンを室へ運ばして食べた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
Lをさかさにしたようなゆるやかな坂をみのえはのぼった。坂の上は草原で、左手に雑木林があった。その奥に池があった。池は凄く、みのえ一人で近よれない。
未開な風景 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
足拍子ゆるやかに、花模様の振袖を翻しながら、そろり/\と宴席の中央に繰り込んで来るのであつた。
夜の奇蹟 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
せっかくお招きはしたもののゆるりと御一泊が願えないことである、じつは妹が二人それぞれ子供連れで遊びに来ている上に、弟どもや近隣の地主連までが泊り込んでいるので
接吻 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
私の鐵の帷子かたびらが、私を捲き締める。説服が、ゆるやかに確かな歩みで進んで來た。
然し、僕の身体に巣食っていた疑惑の病菌は、僕の意志の如何いかんに係らず、ゆるりと、然し確実に僕の全身に拡がりつゝあったのだ。そうして、それが一年ほど以前に、俄然爆発したのだった。
致さぬ前に思うほどのた打つものでもござりませぬ。……まずまず、左様に思し召して、おこころゆるやかに遊ばしますように
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
“The Sweet Chanty”の一節で最も豊かなゆるやかな声量を要する個所で
円卓子での話 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
太い曲つた煙管きせるを左の手に持ち、少し耳が遠いらしく、顔を前に出して物を言つたり聞いたりせられる度に、右のに垂れた眼鏡の紐がゆるやかに揺れた。翁は終始しゆし偉大な微笑ほゝゑみもつて語られた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
一日もはやく京都から遠隔の地へ持って行って、近江境おうみざかいを越えたらゆるりとしてもいいと云われていたのである。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は重々しい韻律を含めて、ゆるやかに両腕を拡げながら不思議な声色で唸り出した。
歌へる日まで (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「おことばですから、ずっとお近くへ行って、ごゆるりと、お物語りなされませ。——実平は、次に退がっておりますゆえ、ご用の時は、お呼びくださいますよう」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅といっても、飾磨から佐用ごうの三日月村までのこと。女の足でも一夜泊りでゆるりと着けよう。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まだ、画を描いていらっしゃるのだ。……よいのかなあ、あんなにごゆるりしていて」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、暇どった。又左、来春陽気が好うなったなら、また上洛のぼられい。ゆるりとな」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こよいは、ゆるりと、語り明かしてもよいが、何せい陣中、いずれ鎌倉へ帰ってから、落着いて話すとしよう。——そちも定めし疲れておろう。こよいは旅のあかでもそそいでやすんだがよかろう」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ううむ、小寺殿より此方へご意見か。かたじけないが、摂津守がこのたびの発意には、さてまた口には語りきれぬ仔細しさいもあること。……官兵衛、まずくつろいで、ゆるりと話そう。どうだな、あちらへ移らぬか」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆるやかに観るわけには断じて相成りませぬ
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあ、ゆるりと……」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)