怪飛けしと)” の例文
爺さんは、先刻さっき打撲くらわされた時怪飛けしとんだ、泥も払わない手拭てぬぐいで、目をくと、はッと染みるので、驚いてあわただしいまで引擦ひっこすって
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
怪飛けしとんだようになって、蹌踉よろけて土砂降どしゃぶりの中を飛出とびだすと、くるりと合羽かっぱに包まれて、見えるは脚ばかりじゃありませんか。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きゃっ!と云うとはね返って、道ならものの小半町、膝とかかとで、抜いた腰を引摺ひきずるように、その癖、怪飛けしとんでげて来る。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小戻こもどりして、及腰およびごしに、ひつくやうにバスケツトをつかんで、あわててすべつて、片足かたあしで、怪飛けしとんだ下駄げたさがしてげた。どくさうなかほをしたが、をんなもそツとつてる。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ただ吹雪に怪飛けしとんで、亡者のごとく、ふらふらと内へ戻ると、媼巫女うばみこは、台所の筵敷むしろじき居敷いしかり、出刃庖丁をドギドギと研いでいて、納戸の炉に火が燃えて、破鍋われなべのかかったのが
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鼻で巻いて、投出されて、怪飛けしとんでその夜は帰った。……しかし、気心の知れたうしとき参詣まいりでさえ、牛の背をまたぎ、毒蛇のあごくぐらなければならないと云うんです。翌晩またひざまずいた。