彗星ほうきぼし)” の例文
その濁った音が彗星ほうきぼしの尾のようにほうと宗助の耳朶みみたぶにしばらく響いていた。次には二つ鳴った。はなはださみしい音であった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
俺のあだなは海の彗星ほうきぼしと云うんだ。知ってるか。俺はいわしのようなひょろひょろの魚やめだかの様なめくらの魚はみんなパクパクんでしまうんだ。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それから後、彗星ほうきぼしが空に出るのを見ると、土地の人達は、「ケメトスが飛んでる!」といつも言いました。
彗星の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
驚いて法師が、笠に手を掛け、振返ると、亀甲形きっこうがたに空をくぎった都会みやこを装う、よろいのごとき屋根を貫いて、檜物町の空に𤏋ぱっと立つ、偉大なる彗星ほうきぼしのごとき火の柱が上って、さかしまほとばしる。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白い虹といおうか、彗星ほうきぼしの尾のような光が、有範朝臣あそんむねとおぼしい辺りから燿々ようようして、二人が、(あっ?)といった間に、眼をぬぐってみれば、何事にも思えない元の闇なのであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「王様さよなら。ばかな私共は彗星ほうきぼしだまされました。今日からはくらい海の底の泥を私共はいまわります。」
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それはあだかも、彗星ほうきぼしが出るような具合に、往々おうおうにして、見える。が、彗星ほうきぼしなら、天文学者が既に何年目に見えると悟っているが、御連中ごれんちゅうになると、そうはゆかない。何日いつ何時なんどきか分らぬ。
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お父さま彗星ほうきぼしが出ると何か悪い事があるんでしょう」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あたかもやみなる彗星ほうきぼしが、地界ちかいへ吸われていったように。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思いもかけない時、——何処と言って、場所、時を定めず、私の身に取って、彗星ほうきぼしのように、スッとこの二人の並んだ姿の、あらわれるのを見ます時の、その心持と云ってはありません。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでも二人はいつものようにめいめいのお宮にきちんと座って向いあって笛を吹いていますと突然とつぜん大きな乱暴ものの彗星ほうきぼしがやって来て二人のお宮にフッフッと青白い光のきりをふきかけていました。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いぬいの空に、あれ、あんな大きな彗星ほうきぼしが——』
そこから彗星ほうきぼしのようなあかりの末が、半ば開けかけた襖越、ほのかに玄関の畳へさす、と見ると、沓脱くつぬぎ三和土たたきあいに、暗い格子戸にぴたりと附着くッついて、横向きに立っていたのは、俊吉の世帯に年増としまの女中で。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それから彗星ほうきぼしがギーギーフーギーギーフーて云って来たねえ。」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「それから彗星ほうきぼしがギーギーフーギーギーフーてって来たねえ」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彗星ほうきぼし
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)