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峰裏
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みねうら
煙は
靜に、
燃ゆる
火の
火先も
宿さぬ。が、
南天の
實の
溢れたやうに、ちら/\と
其の
底に
映るのは、
雲の
茜が、
峰裏に
夕日の
影を
投げたのである。
剩へ
辿り
向ふ
大良ヶ
嶽の
峰裏は——
此方に
蛾ほどの
雲なきにかゝはらず、
巨濤の
如き
雲の
峰が
眞黒に
立つて、
怨靈の
鍬形の
差覗いては
消えるやうな
電光が
山の
端に
空を
切つた。
渡掛けた橋の下は、深さ
千仭の
渓河で、
畳まり畳まり、
犇々と
蔽累なつた濃い霧を、深く
貫いて、……
峰裏の樹立を
射る月の光が、
真蒼に、
一条霧に映つて、底から
逆に
銀鱗の竜の