小屏風こびょうぶ)” の例文
そうしてそのまわりを小屏風こびょうぶで囲んで、五人の御坊主を附き添わせた上に、大広間詰の諸大名が、代る代る来て介抱かいほうした。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小屏風こびょうぶを持ちだして、その蔭で、助右衛門と勘六が、隆達りゅうたつふしを真似て唄った。瀬左衛門は、真面目くさって、堺町の歌舞伎踊りを踊るのだった。
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の友人に一人の好事家こうずかがあって、こういう記念になるような紙切れを蒐集しゅうしゅうして、張り交ぜの小屏風こびょうぶを作ろうとして。
団扇うちわさし、小屏風こびょうぶ、机というようなものを、自分の好みに任せてあてがわれた部屋のとすっかり取りかえて、すみからすみまできれいに掃除そうじをさせた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
で、家中かちゅうが寝静まると、何処どこか一ケ所、小屏風こびょうぶが、鶴の羽に桃を敷いて、すッと廻ろうも知れぬ。……御睦おんむつましさにつけても、壇に、余り人形の数の多いのは風情ふぜいがなかろう。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おまんは次ぎの部屋へやの方へ立って行って、小屏風こびょうぶのわきに茶道具なぞ取り出す音をさせた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まず米友のために一方へ敷きべ、その間へ小屏風こびょうぶを立て、そうして、次に自分のためにほどよきところへ蒲団を敷きかけた時に、またしても今まで静まり返っていた鷲の子が
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
暖炉だんろふさいだままの一尺前に、二枚折にまいおり小屏風こびょうぶを穴隠しに立ててある。窓掛は緞子どんす海老茶色えびちゃいろだから少々全体の装飾上調和を破るようだが、そんな事は道也先生の眼にはらない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いいながら、ふと沢庵が隣のふすまを開けると、そこの炬燵布団こたつぶとん小屏風こびょうぶを囲い、雪の夜を心ゆくまで暖まりながら寝ている人がある。それが光悦だった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藁廂わらびさしの藁の先から、氷柱つららがさがっているような一月の寒さだったし、産褥さんじょくを囲む小屏風こびょうぶ一ツない家なので、嬰児は、へその緒を切られても、泣く力すらなかった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と——隅の小屏風こびょうぶの端がすこし動き、ず……と猫のように背のとがった人影が膝で這い寄って来る。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お粂と思いのほか、どこかで薄ら覚えのある若い武士の寝姿が小屏風こびょうぶのかげに。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小屏風こびょうぶのかげに、銀のらしをつけた切燈台きりとうだいが、まめほどな灯明ほあかりを立てていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
枕々に、一つずつ、小屏風こびょうぶが立つ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小屏風こびょうぶが、幾つも取り出された。
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)