“小切(こぎれ)” の例文
庭内(ていない)の老菩提樹には神聖の樹(き)として香花(かうげ)を捧げ、又日本の奉納手拭の如き小切(こぎれ)を枝に結び附けて冥福を祈る信者が断えない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
お母様から小切(こぎれ)を頂いて頭の丸いお人形を作ったり、お母様が美濃紙(みのがみ)にお写しになった下絵をくり返しくり返し見たりして余念もなく遊ぶのでした。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
褥(しとね)は言ふまでもない事、美しい衣裳小切(こぎれ)までしつぽり濡通(ぬれとほ)つてしまつたが、鶴千代はその儘平気な顔で押通してゐた。
いくら馴(な)れて見ても痛むのはやはり痛いので閉口して居ると、六つになる隣(となり)の女の子が画いたといふ画(え)を内の者が持つて来て見せた。見ると一尺ばかりの洋紙の小切(こぎれ)に墨で画いてある。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
人形を並べたり、小切(こぎれ)を出して見せたりはしても直ぐまた二人は膝の上へ手を重ねて置いて、今に楽みと云ふものが二人の傍(そば)へ自然に現れて出て来るはずだと云ふ風(ふう)に待たれるのでした。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
隠居所へゆくと母のかな女(じょ)は古い小切(こぎれ)を集めてなにかはぎ縫いをしていた。
日本婦道記:梅咲きぬ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たけの文庫には何(ど)ういう物が入っているか見たいナ成程たまかな女だ、一昨年(おとゝし)遣(つか)わした手拭(てぬぐい)がチャンとしてあるな、女という者は小切(こぎれ)の端でもチャンと畳紙(たとう)へいれて置く位でなければいかん
面白え、となった処へ、近所の挨拶を済(すま)して、帰(けえ)って来た、お源坊がお前さん、一枚(いちめえ)着換えて、お化粧(つくり)をしていたろうじゃありませんか。蚤取眼(のみとりまなこ)で小切(こぎれ)を探して、さっさと出てでも行く事か。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
持(もち)呉服物(ごふくもの)を商(あきな)ひ日々(ひゞ)繁昌(はんじやう)なすに近頃(ちかごろ)其向(そのむかう)へ見世開(みせびら)きをなして小切(こぎれ)太物(ふともの)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それから小切(こぎれ)を持ち出して来て、指の附根をしっかりと縛(くゝ)りました。それだけの応急手当をして置いて、雨のふりしきる暗いなかを医者のところへ駈けて行きました。阿部さんは運がよかったのです。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いろ/\に染めたる紙の小切(こぎれ)に5100
ところが皺くちやな執事が、土蔵から取り出して観山氏の前に展(ひろ)げたのはそんな小切(こぎれ)では無かつた。恰(まる)で呉服屋の店先に転がつてゐる緋金巾(ひがねきん)か何ぞのやうに大幅(おほはゞ)のものだつた。
友禅の小切(こぎれ)の
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)