“寺（でら）” の例文
土用の丑の日にへちま加持といふのをする古い真言寺（でら）があったり、それらを私は興あることに考えながら静かに杖を曳いて行く。
寺町 (新字新仮名) ／ 岩本素白(著)
しかし、このあたりには、それほどに大きな、りっぱなご門は、あみだ寺（でら）の山門（さんもん）よりほかにはないはずだが、と法師（ほうし）はひとり思いました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) ／ 下村千秋(著)
ある真言寺（でら）の小僧が、夜分墓原を通りますと、樹と樹との間に白いものがかかって、ふらふらと動いていた。
湯女の魂 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
その先の、きのうまで無住寺（でら）の墓場のあった個所は、ゆうべの暴風雨で崖が崩れて、はるか眼下の浪うちぎわに、大きな土砂のかたまりが、濃い液体のように食（は）み出ていた。
あの顔 (新字新仮名) ／ 林不忘(著)
高柳君は気味の悪い笑いを洩（も）らした。時雨（しぐれ）がはらはらと降って来る。からたち寺（でら）の門の扉に碧巌録提唱（へきがんろくていしょう）と貼（は）りつけた紙が際立（きわだ）って白く見える。女学校から生徒がぞろぞろ出てくる。
野分 (新字新仮名) ／ 夏目漱石(著)
「ようこんな廃（や）れ寺（でら）で、一年もご辛抱なされたものだ」と、覚明がうめいていう。
親鸞 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
軒がくずれ掛ったような古い薬局が角にある三（み）ツ寺（でら）筋を越え、昼夜銀行の洋館が角にある八幡（はちまん）筋を越え、玉の井湯の赤い暖簾が左手に見える周防町筋を越えて半町行くと夜更けの清水（しみず）町筋に出た。
世相 (新字新仮名) ／ 織田作之助(著)
明王（みょうおう）のふるきをもつてあたらしきにゐはせ寺（でら）の法師（ほうし）たるべし
日和下駄：一名　東京散策記 (新字新仮名) ／ 永井荷風(著)
文晁寺（でら）まかで来つつも犬の仔（こ）の戯むるる見ればこれも冬の画（ゑ）
夢殿 (新字旧仮名) ／ 北原白秋(著)
風にひなびた天台寺（でら）は
春と修羅　第二集 (新字旧仮名) ／ 宮沢賢治(著)
平家の墓（はか）のそばにあるあみだ寺（でら）の坊（ぼう）さんが、それをきいて、たいへん同情（どうじょう）をし、またじぶんはびわも好（す）きだったので、この法師をお寺へひきとり、くらしには
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) ／ 下村千秋(著)
「あの……妙なことを聞くようだけれど、この辺に、虚無僧寺（でら）がありますか」
鳴門秘帖：01 上方の巻 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
西日する町の屋根、高き耶蘇寺（でら）
第二邪宗門 (新字旧仮名) ／ 北原白秋(著)
「しゝ寺（でら）のもゝんぢい。」
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) ／ 泉鏡花(著)