むね)” の例文
今日もやつとすませたばかりのところへ、お隣の二年生のむねちやんが、きれいなお菓子箱をかゝへて、内庭に入つて来ていひました。
かぶと虫 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
一にいはく、やはらぎを以て貴しとし、さかふこと無きをむねと為せ。人皆たむら有り、またさとれる者少し。これを以て、或は君父きみかぞしたがはずして隣里さととなりたがふ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
倹約をむねとして一〇家のおきてをせしほどに、年をみて富みさかえけり。かつ一一いくさ調練たならいとまには、一二茶味さみ翫香ぐわんかうたのしまず。
ゾラはかつて文体を学ぶに、ヴオルテエルのかんむねとせずして、ルツソオのくわむねとせしを歎き、彼自身の小説が早晩古くなるべきを予言したる事ある由、善くおのれを知れりと云ふべし。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
俳句では芭蕉を中心とする元禄時代、蕪村を中心とする天明時代をむねとすべきである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
天下の歌人こぞつて古今調こきんちょうを学ぶ、元義笑つてかえりみざるなり。天下の歌人挙つて『新古今』を崇拝す、元義笑つて顧ざるなり。而して元義独り万葉をむねとす、天下の歌人笑つて顧ざるなり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「よし、僕のは強いんだから、もつといゝものをひつぱるんだ。ねえむねちやん。」
かぶと虫 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
夏をむねと作ればいお野分のわきかな 也有やゆう
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)