うば)” の例文
が、孫八のうばは、その秋田辺のいわゆる(おかみん)ではない。越後路えちごじから流漂るひょうした、その頃は色白な年増であった。呼込んだ孫八が、九郎判官は恐れ多い。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宇平の姉りよは叔母婿原田方に引き取られてから、墓参の時などには、しきみを売るうばの世間話にも耳を傾けて、敵のありかを聞き出そうとしていたが、いつかいみも明けた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ふるさとに金葉集をあづけ来ぬ神社みや土座どざする乞食かたゐうば
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ちょっとした葭簀張よしずばりの茶店に休むと、うばが口の長い鉄葉ブリキ湯沸ゆわかしから、渋茶をいで、人皇にんのう何代の御時おんときかの箱根細工の木地盆に、装溢もりこぼれるばかりなのを差出した。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……うばの形相は、絵に描いた安達あだちヶ原と思うのに、くびには、狼のきばやら、狐の目やら、いたちの足やら、つなぎ合せた長数珠ながじゅず三重みえきながらの指図でござった。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その尾花をばな嫁菜よめな水引草みづひきさう雁來紅ばげいとうをそのまゝ、一結ひとむすびして、處々ところ/″\にその屋根やねいた店小屋みせごやに、おきなも、うばも、ふとればわかむすめも、あちこちに線香せんかうつてゐた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うすいふすぼりが、うばの手が榊を清水にひたして冷すうちに、ブライツッケルの冷罨法れいあんぽうにもかなえるごとく、やや青く、薄紫にあせるとともに、が銀の露に汗ばんで、濡色の睫毛まつげが生きた。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云って、独りでうばうなずいた。問わせたまわば、その仔細しさいの儀は承知の趣。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うばは、罪とむくいを、且つ悟り且つあきらめたようなものいい。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)