“女性（おんな）” の例文
御覧（ごらん）のとおり私（わたくし）などは別（べつ）にこれと申（もう）してすぐれた器量（きりょう）の女性（おんな）でもなく、又（また）修行（しゅぎょう）と言（い）ったところで、多寡（たか）が知（し）れて居（い）るのでございます。
小桜姫物語：03 小桜姫物語 (新字新仮名) ／ 浅野和三郎(著)
長く男一人でいれば、女性（おんな）も欲しくなるから、矢張し遊びにも行った。そうかと言って銭が無いのだから、好くって面白い処には行けない。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) ／ 近松秋江(著)
「平家といえば、平家の端（はし）くれでも嫁に来てがあるが、落魄（おちぶ）れ藤家の、それも、御所の書記などの小役人へは、今の女性（おんな）は、嫁にも来ないからなあ」と喞（かこ）った。
親鸞 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
『誰も彼もが持っているものをお前へ強くくれたばかりだ』と。『お前は永遠の女性（おんな）なのだから、永遠の男性（おとこ）を見付け出すまでは、そういうことをしてもよい』
娘煙術師 (新字新仮名) ／ 国枝史郎(著)
私の家にも何十人かの若い女性（おんな）の方が稽古に見えるが、その中に一人や二人はすべてをすてて一生を絵で立て通そうと、本人も決心し親達もその気になってる人がないでもないが
画道と女性：――喜久子姫御用の「春秋屏風」その他―― (新字新仮名) ／ 上村松園(著)
と、柔しい木地（きじ）の女性（おんな）に返つて、ホロ／＼と泣かれた。
大野人 (新字旧仮名) ／ 木下尚江(著)
その事（こと）は後（あと）で指導役（しどうやく）のお爺（じい）さんから伺（うかが）って自分（じぶん）ながらびっくりして了（しま）いました。私（わたくし）は決（けっ）してそんなに偉（えら）い女性（おんな）ではございませぬ。
小桜姫物語：03 小桜姫物語 (新字新仮名) ／ 浅野和三郎(著)
……仏様よ、妾は羅漢として、今こそ勤めを終りました！　これから妾は女として、優しい弱い女性（おんな）として、あなたの懐中（ふところ）へ参ります。ああもう妾は眼が見えない。
神州纐纈城 (新字新仮名) ／ 国枝史郎(著)
女性（おんな）の咲耶子をこの危地（きち）にのこしておいて、男たるものが、知らせに馳（か）けていくなんていやなこッた！
神州天馬侠 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
そこから祇園町の一郭をちょっと出はずれると女の先（せん）にいたところまではすぐなので、たとい今はもうそこにいなくなったにしても、その階下（した）の家主の老婦人は性格（たち）の良い女性（おんな）であるから
狂乱 (新字新仮名) ／ 近松秋江(著)
単（ひと）えに譃を商売にしているからばかりではない、その言っていることでも、その所作にも、何処までが真個（ほんとう）で何処までが譃なのか譃と真個との見界（みさかい）の付かないような気持をさする女性（おんな）だった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) ／ 近松秋江(著)
まさか、その女性（おんな）の方は恋人で、子供は弟子とも、答えられないので
宮本武蔵：06 空の巻 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
あゝいう境遇にいる女性（おんな）だから、何うせ清浄（きれい）なものであろう筈も無いのだが、何につけ事物を善く美しゅう、真個（ほんと）のように思い込み勝ちな自分は、あのお宮が最初からそう思われてならなかった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) ／ 近松秋江(著)
夫人は欣（うれ）しかった。女性（おんな）の真情（まごころ）と、妻のたましいを、緑に掻（か）いて
新編忠臣蔵 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)