大禄たいろく)” の例文
もし無事に任命があったら、このまま幕府の一吏事となって、かえって大禄たいろくや栄衣が、剣の道業を、若木で枯らしてしまうかもしれない。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なに僕は悪いとこへ来ましたよ、他の芸妓と違ってお前は会津藩でも大禄たいろくを取った人の娘だから、よもや己をだますような事は有るまいと思ったから
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
また、良人の忠興は、数度の軍功に、秀吉から引立てられて、豊後杵築きつき大禄たいろくに封ぜられている。——そして大坂でのやしきは、玉造たまつくりにあった。
君は大禄たいろくを取り、僕は小身しょうしんもの、御維新ごいっしんのち、君は弁才があって誠しやかにういう商法をれば盛大に成ろうと云うから、僕が命の綱の金を君に預けた所、商法ははず
首尾しゅびよくゆけば、この機会きかい大禄たいろくで家康にめしかかえられそうだし、まずくゆくと、またぞろ、ていよくいはらわれて、もとの野衾のぶすまに立ちかえらなければならない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
槍先やりさき功名こうみやうよつ長年ながねん大禄たいろく頂戴ちやうだいしてつたが、これから追々おひ/\なかひらけてるにしたがつて時勢じせい段々だん/\変化へんくわしてまゐるから、なにに一のうそなへたいと考へて、人知ひとしれず医学いがくを研究したよ。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
遠山の苗字を継いでもと米搗こめつきをしていた身の上の者が大禄たいろくを取るようになったも、全くお前の心懸こゝろがけが良いので自然に左様な事になったので、拙者などは早く親に別れるくらいな不幸の生れゆえ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)