壁体へきたい)” の例文
あたりは十尺もあろうという厚い壁体へきたいだし、開いている窓はたった一つであるから、一筋の矢を送りこむことも不可能だったことだろう。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
三重壁体へきたいも完成すると、機械台がいく台もかつぎこまれ、そのあとから、一台のトラックが、丁寧な保護枠ほごわくをかけた器械類を満載まんさいして到着した。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いやもっと気をつけて見るなれば、その空樽をささえた壁体へきたいの隅がたてけて、その割れ目に一つの黒影がすべりこんだのを認めることができたであろう。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
灰色の部厚いコンクリートの塀、そのすぐ後に迫って、ふくれ上ったような壁体へきたいでグルリと囲んだ函のような建物。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
キャーッと魂切たまぎる悲鳴が起った。死人しにんの胸のようなドームの壁体へきたいがユラユラと振動してウワンウワンウワンと奇怪な唸り音がそれに応じたようであった。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
壁体へきたいだの階段だの奇妙な小室しょうしつだのの符合が並んでいたが、生憎あいにくごくはしの方だけを切取ったものらしく、何を示してある図か、この断片だんぺんだけでは分らなかった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その素晴らしく高くそびえている白色の円い壁体へきたいの上には、赤い垂れ幕が何本も下っていて
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
三間先のコンクリート壁体へきたいめるようにして歩いていた帆村は、四ツ角を見付けると嬉しそうに両手をあげ、まるでゴールのテープをるような恰好をして、蹣跚よろけていった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
サインの硝子ガラスくだけ、電気看板が壁体へきたいからグッと右の方へ傾くと、まだそのままにしてあったお千代の屍体がぬっと白日はくじつのもとに露出してきたもんだから、見て居た係官や群衆は
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
金具かなぐがピカピカ光る複雑な測定器や、頑丈がんじょうな鉄のフレイムかこまれた電気機械などが押しならんでいて、四面の鼠色ねずみいろ壁体へきたいの上には、妖怪ようかいの行列をみるようなグロテスクきわまる大きい影が
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
古い煉瓦積みの壁体へきたいには夕陽が燃え立つように当っていた。はるかな屋根の上には、風受けのつばさをひろげた太い煙筒えんとつが、中世紀の騎士の化物のような恰好をして天空てんくうささえているのであった。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
所々にブクブクと真黒な粘液ねんえききだし、コンクリートの厚い壁体へきたいは燃えあがるかのように白熱し、隣りのとおりにも向いの横丁よこちょうにも、暑さに脳髄を変にさせた犠牲者が発生したという騒ぎだった。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その壁体へきたいと丁度反対の壁には、配電盤やら監視机や、遠距離制御器せいぎょきなどが並んで、一番右によった一角には、真黒な紙を貼りつけたのぞき眼鏡のような丸い窓が上下左右に、三十ほども並んで居たが
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おお、これは⁉」壁体へきたいに、ポカリと、孔が開いた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)