場処ばしょ)” の例文
旧字:場處
普通ふつう焚火たきびの焔ならだいだいいろをしている。けれども木によりまたその場処ばしょによってはへんに赤いこともあれば大へん黄いろなこともある。
場処ばしょもどの辺ということが土地の人にはよくわかっている。矢野※という荘園のうちで、人里ひとざとより一里ばかり離れたところだとある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
落ちる場処ばしょはだんだん遠方になり、例えば日本から打ち出したものが支那しなまでとどき、もっと強ければ支那しなを超えてヨーロッパまでもゆき
ニュートン (新字新仮名) / 石原純(著)
「よろしゅう御座います、それでは一ついただきましょう。」と自分の答うるやぐ彼は先にたって元の場処ばしょへと引返えすので、自分も其あとに従った。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
場処ばしょは路が対岸に移るようになっているために、あやう略彴まるきばしが目のくるめくような急流にかかっているのを渡ったり、また少時しばらくして同じようなのを渡りかえったりして進んだ。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そこへやれと言わんばかりに、金山寺屋は、神田の場処ばしょまでも、くわしく知らせて行ったのである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「君、隠れる場処ばしょをきめて置こうよ。」
過ぎた春の記憶 (新字新仮名) / 小川未明(著)
場処ばしょは大抵は耕地の附近に、石を土台にしてまるい形に、稲の穂先ほさきを内側にして積み上げて置く、きわめて簡易且つ悠長ゆうちょうなる様式のものであるが
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
が、どうしても今日は土産みやげを持たせて帰そうと思うものですから、さあいろいろな潮行しおゆきと場処ばしょとを考えて、あれもやり、これもやったけれども、どうしても釣れない。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
エディソンはまず炭素の纎条せんじょうを使おうと考えましたが、それにはこれを空気のない場処ばしょに置かなくてはなりませんから、そこで電球を硝子でつくって、最初は紙を炭化してそのなかに入れ
トーマス・エディソン (新字新仮名) / 石原純(著)
まことに心持の場処ばしょである。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
場処ばしょはこの高島からそう離れておらぬ海面での事らしいが、或る夜漁夫たちが舟を乗り出すと、おびただしく沖が光っているので、ハマチすなわち鰤の大群と心得て
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
場処ばしょへ着いた。と見ると、いつも自分の坐るところに小さながチャンと坐っていた。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
諏訪では是をまたヒタキジロともうのを見ると、ヒジロはすなわち火を場処ばしょ、ちょうど英語の Fireplace と同格の語と考えられる。シロの古い用法は苗代なわしろのこっている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そうしてそこにも同じ年配の女性が、まだ幾人か去来し、且つ手を打って歌っているのであった。芸者と名のつく者はこの土地にも相応におり、また格別他の場処ばしょとちがわない生活をしている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もとよりそのためにほかの氏々の神を廃したのではなく、みんなその場処ばしょに集めたものと解していたのではあろうが、こうなってくるとそれぞれの氏族の、慣例や利害の差がすこしずつ現われて
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
有りそうな場処ばしょにばかり有るのである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)