土竈どがま)” の例文
... 涼炉しちりんで燃しているようなものサ。土竈どがまだって堅炭かたずみだってみんな去年の倍と言っても可い位だからね」とお徳は嘆息ためいきまじりに「真実ほんとにやりきれや仕ない」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
本陣の勝手口の木戸をあけたところにいてある土竈どがまからはさかんに枯れ松葉の煙のいぶるような朝が来た。餅搗もちつきの時に使う古い大釜おおがまがそこにかかった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこで正助爺さんは掃溜の中から犬の死骸を拾つて、綺麗きれいに洗ひきよめ、それを土竈どがまのさきへ埋めました。
竜宮の犬 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
しゃさけ出来栄できばえに、たちまち一部の册子そうしとなりぬ。そもこの話説はなしの初集二集は土竈どがまのパットせし事もなく。起炭おこりずみにぎやかなる場とてもあらねど後編は。駱駝炭らくだずみ立消たちぎえなく。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
火を焚いている一人はしきりと枯れた小枝や青い松葉を折って来て大きな土竈どがまの下をもやしている。
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けん長屋ながやのまんなか縁起えんぎがよくないという、ひとのいやがるそんまんなかへ、所帯道具しょたいどうぐといえば、土竈どがまと七りんと、はし茶碗ちゃわんなべが一つ、ぜん師匠ししょう春信はるのぶから、ふちけたごろの猫脚ねこあしをもらったのが
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
正面は粗末なる板戸の出入口。しものかたには土竈どがま、バケツ、焚物たきもの用の枯枝などあり。その上の棚には膳、わん、皿、小鉢、茶を入れたる罐、土瓶どびん、茶碗などが載せてあり。ほかに簑笠みのがさなども掛けてあり。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこの土竈どがまの前には古い大釜おおがまを取り出すものがある。ここの勝手口の外には枯れ松葉を運ぶものがある。玄関の左右には陣中のような二張りの幕も張り回された。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして土竈どがまは大きなのを二個ふたつ上に出して符号を附けて置いたらそれも無いのです
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
彼方の山の隅では大きな土竈どがまの下にとろとろと赤い火が燃えている。三人は訳の分らぬ符号で何事か示し合った。小男から羅紗帽の隊長が、鉞を受取るとぐるりと捕われ人の後方に廻った。……
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)