国人くにびと)” の例文
旧字:國人
毎年に一度の祭りあるごとに、生贄いけにへをぞ供へけるが、その生贄は、国人くにびといまとつがざる処女をとめをば、浄衣じやういに化粧してぞ奉りける。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人々は巨勢に向ひて、はるばるぬる人と相識あいしれるよろこびをべ、さて、「大学にはおん国人くにびとも、をりをり見ゆれど、美術学校に来たまふは、君がはじめなり。 ...
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
朝高は異国の敵を撃破うちやぶって帰った。彼は凱陣がいじん家土産いえづととして百人の捕虜をいて来た。飛騨の国人くにびとは驚異の眼を以て、風俗言語の全くことなれる蒙古の兵者つわものを迎えた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
賢弟とわかれて国にくだりしが、国人くにびと大かた経久がいきほひにきて、塩冶えんやめぐみかへりみるものなし。従弟いとこなる赤穴あかな丹治、富田の城にあるをとむらひしに、利害を説きて吾を経久にまみえしむ。
津の国人くにびとは和泉の国人の顔をみるためにって来るものとしか思えず、どちらも、珍しくもない仏頂面ぶっちょうづらをあわせるだけで、橘姫のしみるような顔のやさしさは絶えて見るべくもなかった。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
これもまた、極めて平明な事実でありましたけれど、尾張の国人くにびととして、こう言われてみれば、悪い気持もしないと見えます。平凡ではあるが、辞令としては巧妙といわねばなりません。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして僕にはほとんどこの愛が、たとい諸々もろもろ国人くにびとの言葉と御使みつかいの言葉とを語りとも、もし愛なくば鳴る鐘、響く鐃鈸にょうはちのごとしと書いてある、あの愛と同じものであるように思われるのです。
大臣の夫人はこの君の伯母御おばごにあたりて、姉君さへかの家にゆきておはすといふに、始めて逢へること国人くにびとの助を借らでものことなるべく、またこの城の人に知らせじとならば
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
むかし一荊州にありし時だに、汝ごときは物の数としていたわれでない。いわんや今、蜀四十一州をあわせて、精兵数十万、肥馬無数、糧草は山野に蓄えて、国人くにびとみな時にあたるの覚悟をもつ。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大臣の夫人はこの君の伯母御おばごにあたりて、姉君さえかの家にゆきておわすというに、はじめてあえること国人くにびとの助けを借らでものことなるべく、またこの城の人に知らせじとならば
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)