囲炉裏ゐろり)” の例文
旧字:圍爐裏
囲炉裏ゐろり自在竹じざいだけ引懸ひつかけるこひにしても、みづはなせばきねばならぬ。お前様めえさまふなのやうに、へたりとはらいてはかねえ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
囲炉裏ゐろりは五尺あまり、ふかさははひまで二尺もあるべし、たきゞおほき所にて大火おほびくゆゑ也。家にかちたるものは木鉢きばちの大なるが三ツ四ツあり、所にて作るゆゑ也。
雨戸を開けて顔を出したのは、四角なあから顔のいさんである。瀬田の様子をぢつと見てゐたが、おもひほかこばまうともせずに、囲炉裏ゐろりそばに寄つて休めと云つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
黒くすゝけた天井を洗つたり、破れた壁をざつと紙でつてつくろつたり、囲炉裏ゐろりの縁を削つたり、畳を取り替へたりして、世話人達は新しい住職のやつて来るのを待つた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
足すすぎて、囲炉裏ゐろりによりて木賃の飯をたきたきも、又の鬼のこと尋ぬれば、老婆恐れおののきて、何事かかき付くるやうにいふ、辺土の女、其言葉ひとしほに聞取りがたくて何事を
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
土間には、こま/\した農具やどろのついた彼の仕事衣しごとぎやが一方の壁に立かけたりぶら下げたりしてあつた。一つの隅に囲炉裏ゐろりが設けられ、それを取まいて三四脚の粗末な椅子いすが置かれてあつた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
その頃です、僕が囲炉裏ゐろりの前で
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
ふと気がつくと、自分は蚊帳かやの中に寝てゐるのだつた。それは囲炉裏ゐろりのある隣の一間であつた。世話をする婆さんの寝てゐるいびきの音は向うのからきこえて来てゐる。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
(たれむしろをする事堂上だうしやうにもありて古画にもあまた見えたる古風なり)勝手の方には日用のうつはあまたとりちらしたるなかに、こゝにも木鉢きばち三ツ四ツあり、囲炉裏ゐろりはれいの大きくふかきの也。
かれは其処を出て、この庫裡くり——囲炉裏ゐろりのあるこの庫裡に来た。今と少しも変らないこの庫裡に……。現に、その板戸がある。竹と松の絵が黒くけむりすゝけた板戸が依然としてある。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)