喫茶店きっさてん)” の例文
この木は郷里の家以外についぞどこでも見たという記憶がない。近ごろよく喫茶店きっさてんなどの卓上を飾るあの闊葉かつようのゴムの木とは別物である。
試験管 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
いってみると、いえなかのうすぐらい、喫茶店きっさてんでありました。こわれた道具どうぐや、不用ふようのがらくたをってくれというのでした。
おじいさんが捨てたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
夜、太田は四、五人の男たちと一緒に一室に腰をおろしていた。それは大阪のどこか明るい街に並んだ、喫茶店きっさてんででもあったろう。何かの集会の帰りででもあったろうか。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
東より順に大江橋おおえばし渡辺橋わたなべばし田簑橋たみのばし、そして船玉江橋まで来ると、橋の感じがにわかに見すぼらしい。橋のたもとに、ずり落ちたような感じに薄汚うすぎたない大衆喫茶店きっさてん飯屋めしやがある。
馬地獄 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
そのあくる朝、学者は喫茶店きっさてんへ、新聞をよみに出かけました。
その後ある休日の午後、第Xシンフォニーの放送があったとき、銀座のある喫茶店きっさてんへはいってみた。やはりだめであった。
路傍の草 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
だが、そこには女学校じょがっこうあり、中学校ちゅうがっこうあり、また、専門学校せんもんがっこうがあったから、むろん、喫茶店きっさてん映画館えいがかんなどもありました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
柳吉は相変らず浄瑠璃の稽古に出掛けたり、近所にある赤暖簾あかのれんの五銭喫茶店きっさてんで何時間も時間をつぶしたりして他愛なかった。蝶子は口が掛れば雨の日でも雪の日でも働かいでおくものかと出掛けた。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
F屋喫茶店きっさてんにいた文学青年給仕のM君はよく、銀座なんか歩く人の気が知れないと言っていたが、考えてみれば誠にもっとも至極なことである。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
このとき、どこか、まち喫茶店きっさてんから、レコードでならす、あまったるい歌声うたごえながれてきました。そこには、ことなった生活せいかつのあることをおもわせました。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一方ではまたSとかFとかKとかいうわれわれ向きの喫茶店きっさてんができたので自然にそっちへ足が向いた。
コーヒー哲学序説 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あたまうえ拡声器かくせいきから、おんなこえが、がなりはじめて、なつものの宣伝せんでんや、駅前えきまえ喫茶店きっさてん開業かいぎょうした広告こうこくや、そのうるさくさえおもったのを、なにまちなん丁目ちょうめのくつてんでは
アパートで聞いた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
喫茶店きっさてんの清潔なテーブルへすわって熱いコーヒーを飲むのも盛夏の候にしくものはない。
備忘録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
朝晩あさばんあには、このくつをはいて、通勤つうきんもすれば、また会社かいしゃ用事ようじで、方々ほうぼうをあるきまわったのでした。ときどきは、映画館えいがかんまえにもてば、喫茶店きっさてんへもちよったでありましょう。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
喫茶店きっさてんなどで見受ける若い男女に活動仕込みの表情姿態を見るのは怪しむまでもないが、これが四十前後の堅気な男女にまで波及して来たのだとすると、これはかなり容易ならぬ事かもしれない。
Liber Studiorum (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そういうときに、清らかに明るい喫茶店きっさてんにはいって、暖かいストーブのそばのマーブルのテーブルを前に腰かけてすする熱いコーヒーは、そういう夢幻的の空想を発酵させるに適したものである。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
喫茶店きっさてんの二階で友人と二人で話していた。
試験管 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)