唐物からもの)” の例文
……随分珍重なされたがよろしからうとは存じますが、御当家ほどの御家で、瀬戸のみの珍重もいかがなれば、この上に唐物からものの名物を
小壺狩 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
いずれ唐物からものであろうが、師直すら知らないような綺麗きらな織物の袖なし羽織を、桔梗ききょうぼかしの白綾の上へ、すずやかに羽織っていた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
唐物からものかご芙蓉ふよう桔梗ききょう刈萱かるかやなど秋草を十分にけまして、床脇の棚とうにも結構な飛び青磁の香炉こうろがございまして、左右に古代蒔絵こだいまきえの料紙箱があります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
日本橋本町二丁目の唐物からもの商で、長者番付にも載るほどの富豪だという、主人あるじの喜左衛門は茶人としても名高く、歌、俳諧はいかいなども堪能だという評判だった。
落葉の隣り (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それらを通じて、彼は海外との交易をやらせ、およそ都に見られる唐物からもののすべては佐女牛さめうしの門から密々いちさばかれていた物といってよい。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松平不昧なども秘蔵の唐物からもの茶入油屋肩衝あぶらやかたつきに円悟墨蹟を配したのに対して、古瀬戸茶入やりさやには虚堂墨蹟を配し、参覲交代の節には二つの笈に入れ、それぞれ家来に負わせて
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
だまつてゐな、おら馬鹿ばかすきだ……其儘そのまゝかへつて綿服めんぷくけ、先方むかうくと寄附よりつきへとほすか、それとも広間ひろまとほすか知らんが、鍋島なべしま唐物からものなにいてるだらう、かこひへとほる、草履ざうりが出てやう
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その茶器のはなしから、宗易が唐物からもの茶入れについてかなり詳しい説を述べた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然るに、筑前には、茶席において唐物からもの茶入れ一つ見るにも、異国の茶わん一つ手にして観るにも、いつも油断なくそれらの器物をとおして海外の事情と文物に触れようとする心がけが見える
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よくある土地ところの長者とは、こんなていの人物をいうのだろう。——五十がらみの、でっぷり肥えた体も、唐物からものずくめの衣服や身かざり派手派手と、毘沙門天びしゃもんてんの像でも歩いて出て来たようだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)