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向岸
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むかうぎし
丁ど
瞳を
離して、あとへ
一歩振向いた
處が、
川の
瀬の
曲角で、やゝ
高い
向岸の、
崖の
家の
裏口から、
巖を
削れる
状の
石段五六段を
下りた
汀に、
洗濯ものをして
居た
娘が、
恰もほつれ
毛を
掻くとて
眞中頃で、
向岸から
駈けて
來た
郵便脚夫と
行合つて、
遣違ひに
一緒になつたが、
分れて
橋の
兩端へ、
脚夫はつか/\と
間近に
來て、
與吉は
彼の、
倒れながらに
半ば
黄ばんだ
銀杏の
影に
小さくなつた。