可成なるべく)” の例文
自信は無くとも伝道は為なければならぬ。それには、可成なるべく狭い土地で、そして可成教育のある人の居ない方が可いのだ。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
途中で釣の道具を買調かいそろえて、乃公は可成なるべく水の静かな処に陣取って、釣魚つりを始めた。二三箇所試したが、流が早いからなんにも釣れない。それで乃公はだんだん上の方へ行った。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さあるからに親類以下散々に智慮外の体見及候得共みおよびそうらえども我一代は兎角の義に及ばず候とおもい、上下の分も無き程に候へ共覚悟前ならば苦しからず候、氏真までかくごとくにては無国主と可成なるべく
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
母は東京で世話になる人だといつて、彼が誇張して話したとみえて、素朴ではあるが、ひどく慇懃いんぎん待遇もてなしてくれるので、彼女は挨拶に困つて、可成なるべく口を利かないことにしてゐるより外なかつた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
で、彼がうちへ帰つてくると、玄関の戸がモウ閉つてゐた。信吾は何がなしにわが家ながらしきゐが高い様な気がして、可成なるべく音を立てぬ様にして入つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
さうして可成なるべくそんな秘密ひみつさはりたくないやうな心持こゝろもちもした。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
顏を洗つてから、可成なるべく音のせぬ樣に水を汲み上げて、盥の水を以前もとの如く清く盈々なみ/\として置いて、さて彼の一片の小扇をとつて以前もとの如くそれに浮べた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
顔を洗つてから、可成なるべく音のせぬ様に水を汲み上げて、盥の水を以前もとの如く清く盈々なみなみとして置いて、さて彼の一片の小扇をとつて以前の如くそれに浮べた。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
智恵子はそれに就いての自分の感想を可成なるべく顔に現さぬ様に努めて、『兎も角お返事はお上げなすつた方が可いわ。矢張やつぱし梅ちやんや新坊さんの為には……。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
今より六代の前、報恩寺に住持たりし偉運僧正ゐうんそうじやうが浄書したりと云ふ西行法師の山家集、これは我が財産中、おのれの詩稿と共に可成なるべく盗まれたくなしと思ふ者なり。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして、女といふ女には皆好かれたがる。女の前に出ると、処嫌はず気取ツた身振をする、心は忽ちとろけるが、それで、煙草の煙の吹き方まで可成なるべく真面目腐ツてやる。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それで可成なるべく寡言くちすくなに、すきのない様に待遇あしらつてはゐるが、腑に落ちぬ事があり乍らも信吾の話が珍しい。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
仕方がないから、それなり歸つて來て、其時は餘程障子も白んで居ましたが、復此手紙を讀みました。所が可成なるべく早く國に歸つて呉れといふ事が、繰り返し/\書いてあるんです。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
其日は一日、可成なるべくくすんだ顏を人に見せまいと思つて、頻りに心にもない戲談を云つたが、其麽そんな事をすればする程、頭腦あたまが暗くなつて來て、筆が溢る、無暗矢鱈に二號活字を使ふ。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
其日は一日、可成なるべくくすんだ顔を人に見せまいと思つて、頻りに心にもない戯談じようだんを云つたが、其麽そんな事をすればする程、頭脳あたまが暗くなつて来て、筆が渋る、無暗矢鱈に二号活字を使ふ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
唯一本の銚子に一時間もかゝりながら、東京へ行つてからの事——言語ことば可成なるべく早くあらためねばならぬとか、二人がまだ見た事のない電車への乘方とか、掏摸すりに氣を附けねばならぬとか
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
たつた一本の銚子に一時間もかかりながら、東京へ行つてからの事——言葉を可成なるべく早く改めねばならぬとか、二人がまだ見た事のない電車への乗方とか、掏摸すりに気を付けねばならぬとか
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それに今日はさいが頭痛でヒドク弱つてるから可成なるべく早く生徒を帰らしたい、課外は休んで貰へまいかという話、といふのは、破格な次第ではあるが此校長の一家四人——妻と子供二人と——は
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それに今日はさいが頭痛でヒドク弱つてるから可成なるべく早く生徒を歸らしたい、課外は休んで貰へまいかという話、といふのは、破格な次第ではあるが此校長の一家四人——妻と子供二人と——は
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
尤もかういふ都會では、女なら隨分資格の無い者もつかツてる樣だけれど、男の代用教員なんか可成なるべく採用しない方針らしいですから、果して肇さんが其方へ入るにいゝどうか、そら解りませんがね。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
尤もかういふ都会では、女なら随分資格の無い者もつかツてる様だけれど、男の代用教員なんか可成なるべく採用しない方針らしいですから、果して肇さんが其方へ入るにいいどうか、そら解りませんがね。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私は直ぐ腹の中でフフンと云ふ氣になつたが、可成なるべく平生ふだんの快活をよそうて
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
私は直ぐ腹の中でフフンと云ふ気になつたが、可成なるべく平生の快活を装うて
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
掃除をするのは面倒だから、可成なるべく散らかさない様に気を付ける。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
掃除するのは面倒だから、可成なるべく散らかさない樣に氣を附ける。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)