口留くちどめ)” の例文
鈴木屋さんに知れても悪いから黙ってゝおくれよと尽底すっかりだまして口留くちどめたが、夜半よなかに最う一遍根締ねじめを見ようと思って往ったのだが、ちょうどい処で出会ったね
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
主翁ていしゅはこう云ってじょちゅう口留くちどめをしたが、どうしても不思議でたまらないので、某日あるひ、この土地に昔から住んでいると云う按摩あんまを呼んだ時に、肩をんでもらいながら聞いてみた。
鼓の音 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「でも、私は口留くちどめされたんですもの、どんなことがあつても言つてはいけないつて」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
取迯とりにがしては假令たとへうつたへ出るとも此身のとがまぬかれ難しことには一人旅ひとりたびとめ御大法ごたいはふなり女は善六の頼みなれば云譯いひわけたつべけれどさふらひの方は此方の落度おちどのがれ難し所詮しよせん此事はかくすにしかじと家内の者共にのこら口留くちどめしてあたりの血も灑拭ふきぬぐひ死骸は幸ひ此頃うゑし庭の梅の木を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かうぞんじ申さずと云に押返おしかへして將監方に奉公ほうこう致たるに相違有まいなと尋るにさらぞんじ申さずと答へければ否々廿二三年あと其方奉公中傍輩に澤の井と申す女中ぢよちうありしと存じ居べしと尋ねけれ共一かう存申さずと云に次右衞門はこれは伊勢より女房に口留くちどめしたるに相違なしと心付たれば懷中くわいちうより小判十枚取出し紙につゝみて差出しいざちやどの此金子は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)