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出窓
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でまど
二階の
出窓には
鮮かに朝日の光が当っている。その向うには三階建の
赤煉瓦にかすかな
苔の生えた、逆光線の家が聳えている。
時ありて
出窓の下を過ぐるときは、
隧道の中を行くが如し。
唯だ黒烟の
戸窓より溢れて、壁に沿ひて上るを見るのみ。
そのうち、
香しいやうな、
遠くで……
海藻をあぶるやうな
香が
傳はる。
香は
可厭ではないが、
少しうつたうしい。
出窓を
開けた。おゝ、
降る/\、
壯に
白い。
出窓の
縁へ
肘を
懸けて、するりと
体を
持ちあげると、
如何にも
器用に
履いた
草履を
右手で
脱ぎながら、
腰の三
尺帯へはさんで、
猫のように
青畳の
上へ
降り
立ったのは、三
年前に
家を
出たまま
八幡樣の
裏の
渡し
場へ
出ようと
思つて、
見當を
取違へて、あちらこちら
拔け
裏を
通るうちに、ざんざ
降りに
降つて
來た、ところがね、
格子さきへ
立つて、
雨宿りをして、
出窓から