処刑しおき)” の例文
旧字:處刑
「さて誰袖の折檻せっかんも今日はこのくらいにして置いて、次の処刑しおきに移ろうかい。やいやい加藤次、白萩しらはぎめをもっと縁近く曳いて参れ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とある夕ぐれのことであった、情知らぬ獄吏に導かれて村中引きまわしにされた上、この岡の上でいたましい処刑しおきにおうたということ。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
「でも、何んにも知らないものが、出来心で穴の中から五十両見付け、それを隠したばかりにお処刑しおきになっちゃ可哀想じゃありませんか」
ひとつは九郎右衛門という図太い男の首、他のひとつはお八重という美しい女の首で、先に処刑しおきを受けた男は赤格子あかごうしという異名いみょうを取った海賊であった。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「いちばん困るのは、お処刑しおきは、どう決まるであろうと、私に訊いたら分るかとでも思うて、探るのでございます」
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
助かろうなぞという了簡は毛頭ございません、親殺しの私ですから、何卒どうぞ御法通りお処刑しおきをお願い申します
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「コラッ丘一おかいち。なぜドアに鍵をかけたッ、早く明けないと……昨日のお処刑しおきを忘れたのかネ、お前さんは。よオし、もうわたしゃ堪忍袋の緒が切れた。鍵ぐらいなアんだッ」
空気男 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
今は、そこではお処刑しおきがありませんが、昔は、あそこでよく罪人が首を斬られたものです。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あれ程迄世間を騒がせた天一坊も、とうとうお処刑しおきとなって、獄門にけられてしまいました。あの男の体は亡びてもあの悪名はいつ迄もいつ迄も永く伝えられる事でございましょう。
殺された天一坊 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
処刑しおきになりゃ、きまりがつくだろうよ。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
あれが処刑しおきだ。
「それでは親分さん、何分よろしくお願い申します。悪い奴でも、肉身の弟に変りはございません、決して処刑しおきに上げたいわけではないのですが——」
細い手の幽霊いや柳の木に天水桶てんすいおけか、うんそうじゃない、浪人者は柳田典藏で、細い手と云うのは勇治とかいう胡麻の灰という事が分って、お処刑しおきに成ると云う話だ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「俺も、十七年も牢番をしてるが、おめえみたいな、人気のある泥棒は、はじめて扱った。——お処刑しおきの日にゃ、大変な人出だろうという噂だぞ。体を、大事にしろよ」
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「俺ら仲間の処刑しおき、凄かろうがな。……手前を捉えて、こうしようというのが親分の念願なのさ」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ミチミ、今夜君は不謹慎にも十遍も先生といったよ。後できびしいお処刑しおきを覚悟しておいで」
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ほんとうだとも、話せば長いけれど、盗みもしねえのに、盗人ぬすっとだなんて人違いでお処刑しおきに逢って、ほら、尾上山の上から突き落されたには落されたけれど、人に助けられちまったんだ。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
処刑しおきの済んだ事をお聞きになりました時、ただ一言「そうか」と仰せられまして淋しく御家来の顔をお眺めになりましたが、お伝えに上った御家来は其の時御奉行様にじっと見つめられて
殺された天一坊 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
それは、一度銭形平次に挙げられて、処刑しおきにあがるばかりになったのを、縄抜けをして、それっきり行方ゆくえ知れずになっている、名代の悪者だったのです。
逃げかけて捕まった遊女どもがどういう処刑しおきにされるものかよく心得ておろうがの。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
甚内が鳥越橋でお処刑しおきになる最後の時の言葉に、おこりさえ患わなければ、召捕られるようなことはなかったのだ、我れ死すとも魂魄こんぱくをこのに留め、永く瘧に悩む人を助けんと言いながら
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
周「これさ、仮令たとえ然るべき武士で何役を勤めたにもせよ、斯うやって悪事を共にすれば、なわに就いて処刑しおきになる時は同じ事だ、今日きょうに及んで無用の格式論、小納戸役がどう致した、馬鹿なつらを」
頭立った役人は、処刑しおきの場所を選定して、そこに二枚の荒莚あらむしろを敷かせ
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「また云ったネ。——今夜かえってからお処刑しおきだよ」
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
吉田寅次郎がお処刑しおきになって、首が上ったろう、そうしてお前たちと、あそこの角んところへ胴中どうなかけたろう、そうすると、お前、その翌日だったか、もう長州ざむれえがやって来て
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「お処刑しおきはこれでいいんだろうか。わたしたちはまだ斬られていない」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何ういう贔屓か存じませんがあんま依估えこ御沙汰ごさたかと存じます、成程幸兵衞は親のかたきでもござりましょうが、御新造は長二郎の母に相違ござりませんから、親殺しのお処刑しおきに相成るものと心得ますに
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
薪十郎に訴えられたら、捕らえられて処刑しおきにされなければならない。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
首を切られるよりもつらい処刑しおきだったに相違ありません。
処刑しおきになってしまったんだから、正直者がかわいそうに、むじつの罪で死んだといって、皆さんの同情が集まって、今では米友荒神こうじんという荒神様が出来て、それがお前のお墓になっているんだよ
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
処刑しおきを受けんではなるまいが、そうじゃないか
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お処刑しおきさ」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その若い番頭が直ぐに捕えられてお処刑しおきにかかったが、お内儀さんの方は、最初からその気持でやらせたわけではなし、直接にも、間接にも、夫殺し、主殺しに、手を下したわけではないのだから
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)