入聟いりむこ)” の例文
けんにて住居ぢうきよなし此近邊このきんぺん大身代おほしんだいなり主は入聟いりむこにてしやう三郎と云今年ことし六十さいつまは此家のむすめにて名をおつねび四十さいなれども生得しやうとく派手はでなる事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お定は先妻の子の伊助がお人よしのぼんやりなのを倖い、寺田屋の家督は自身腹を痛めたすぎ入聟いりむことってつがせたいらしい。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
それがみすみす他人の生活費になるのもつまらぬ話だから、三男の寡婦のところへ入聟いりむこすれば、ムダなものが一つもなくなって、万事都合がよろしい。
淪落の青春 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
その通りです、私は先代の主人の娘、眞實の父が亡くなつて、今の父が母のところに入聟いりむこになり、間もなく私を
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
それ以外には入聟いりむこおよび入夫にゅうふの制、是は女しかおらぬ家を見つけて、そこへあまったヲンヂたちを配るのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この時代において男子は女の家に行って婚を求め、結婚した後も男子は女の家に通うのみで別に一家をはじめて共棲きょうせいすることはなかった。女の家に入聟いりむことなることもなかった。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
だからこの折に、寧子ねねとの結婚をしおに、中村の里から母を迎えてもよいのであるが、浅野家のほうでは、嫁にはやれぬ娘とのことで、その結果、入聟いりむこというので話はできているのである。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
種則を富田病院の入聟いりむこにする。衣子の長男はまだ十四で、独立するまでには時間があるから、富田家の財産を折半して、病院の方は美代子にやらせる。
ジロリの女 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
意地いぢ入聟いりむこ同樣にやかましく朝夕てうせき云ける故九助も何卒なき母が遺言ゆゐごんの如く田地を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
料理れうりしてがんいつはり食せけるに不思議や條七は五十日たつたゝぬにかみぬけ癩病らいびやうの如く顏色がんしよくも變り人交際つきあひも出來ぬやうに成ければおてつは仕濟したりと打よろこび條七に打むかひお前は入聟いりむこの身斯る業病ごふびやうになりては先祖せんぞすまず早く實家へ歸りくれよといとつれなくも言ければ條七も詮方せんかたなく前世ぜんせの業と斷念あきらめるより外なしと女房娘を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)