何返なんべん)” の例文
そうして小六の帰る間、清に何返なんべんとなく金盥の水をえさしては、一生懸命に御米の肩をしつけたり、んだりしてみた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あゝ。うしてれ」と宗助そうすけこたへた。さうして小六ころくかへあひだきよ何返なんべんとなく金盥かなだらひみづへさしては、一生懸命いつしやうけんめい御米およねかたけたり、んだりしてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何返なんべんもあるんだよ。それから床を出て、障子をあけて、甘干しの柿を一つ食って、また寝床へ這入はいって、早く日が暮れればいいと、ひそかに神仏に祈念をこらした」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
行こうと思う方へは行かないで曲り角へくるとただ曲りやすい方へ曲ってしまう、ここにおいてか同じ所へ何返なんべんも出て来る、始めの内は何とかかんとかごまかしていたが
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助はくるしいので、何返なんべんせきつて、うしろの廊下へて、せまそらを仰いだ。あにたら、あによめと縫子を引きわたしてはやく帰りたい位に思つた。一ぺんは縫子をれて、其所等そこいらをぐる/\運動してあるいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「また寝ていらっしゃるか、昨夕ゆうべは御迷惑で御座んしたろう。何返なんべんも御邪魔をして、ほほほほ」と笑う。おくした景色けしきも、隠す景色も——恥ずる景色は無論ない。ただこちらがせんを越されたのみである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)