仙境せんきやう)” の例文
茹栗ゆでぐり燒栗やきぐり可懷なつかし。酸漿ほうづきることなれど、丹波栗たんばぐりけば、さととほく、やまはるかに、仙境せんきやう土産みやげごと幼心をさなごころおもひしが。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
○此地の人すべて篤実温厚とくじつをんこうにして人とあらそふことなく、色慾しきよくうす博奕ばくえきをしらず、酒屋なければ酒のむ人なし。むかしよりわら一すぢにてもぬすみしたる人なしといへり。じつ肉食にくしよく仙境せんきやう也。
忘る蓬莱ほうらい仙境せんきやうも斯るにぎはひはよも非じと云ふべき景況ありさまなれば萬八樓よりそれたる一同は大門内おほもんうち山口巴やまぐちともゑと云引手茶屋へをどこめば是は皆々樣御そろひで能うこそおいであられしぞ先々二階へいらつしやいと家内の者共喋々てふ/\しき世事の中にも親切しんせつらしく其所そこ其所こゝよと妓樓まがき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いやしくも未来みらい有無うむ賭博かけものにするのである。相撲取草すまうとりぐさくびぴきなぞでは神聖しんせいそこなふことおびたゞしい。けば山奥やまおく天然てんねん双六盤すごろくばんがある。仙境せんきやうきよくかこまう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)