仁王立におうだち)” の例文
何百年かわからない古襖ふるぶすまの正面、板ののようなゆか背負しょって、大胡坐おおあぐらで控えたのは、何と、鳴子なるこわたし仁王立におうだちで越した抜群ばつぐんなその親仁おやじで。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
清君は、木下大佐から形見にいただいた短刀を腰にって甲板に、いさましく仁王立におうだちになり、しぶきにぬれている。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
孫軍曹は、掘起した岩の上に仁王立におうだちになって指図しながら、事務所から出て来て苦り切った顔をしている経理に
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
うなりニキタはをぱたり。そうしてめたててやはりそこに仁王立におうだち
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼れは毎日毎日小屋の前に仁王立におうだちになって、五カ月間積り重なった雪の解けたためにみ放題に膿んだ畑から、恵深い日の光に照らされて水蒸気の濛々もうもうと立上る様を待ち遠しげに眺めやった。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
仁王立におうだち突立つったちました。此のていを見るより先に立ちたるだいの男が
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
左右へ傾くふなばたへ、ながれが蒼くからみ着いて、真白にさっひるがえると、乗った親仁も馴れたもので、小児こどもかついだまま仁王立におうだち
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
袂を支える旅僧と、押揉おしもむ二人の目のさきへ、この時ずか、とあらわれた偉人の姿、もやの中なる林のごとく、黄なる帷子かたびら、幕をおおうて、ひさしへかけて仁王立におうだち、大音に
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くせものは、仁王立におうだちに成つて、じろ/\と瞰下みおろした。しかし足許あしもとはふら/\して居る。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と震えてもがくのを、しかと片足に蹈据ふみすえて、仁王立におうだちにすっくと立った。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)