五稜郭ごりょうかく)” の例文
不幸にも次第に西へ回った風の転向のために火流の針路が五稜郭ごりょうかくの方面に向けられ、そのためにいっそう災害を大きくしたのではないかと想像される。
函館の大火について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その翌年の二月、條野採菊じょうのさいぎく翁が伊井蓉峰いいようほう君に頼まれて「茲江戸子ここがえどっこ」という六幕物を書くことになった。故榎本武揚えのもとたけあき子爵の五稜郭ごりょうかく戦争を主題テーマにしたものである。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
武揚たけあき五稜郭ごりょうかくにたてこもったときにも、これをだいじにもっていましたが、いよいよこうさんしたとき
箱館はこだて五稜郭ごりょうかく開城かいじょうのとき、総督そうとく榎本氏より部下に内意を伝えて共に降参せんことを勧告かんこくせしに、一部分の人はこれをきいおおいに怒り、元来今回のきょは戦勝を期したるにあらず
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
けれどもぼくは昨夜さくやからよくないのでつかれた。書かないでおいたってあんなうつくしい景色けしきわすれない。それからひるは過燐酸かりんさんの工場と五稜郭ごりょうかく。過燐酸石灰せっかい硫酸りゅうさんもつくる。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
もはや、無視することが出来ない要津ようしんになった。松前藩は運上所を置き、幕府は奉行をおいた。近ごろあわただしく替る支配者のうち、最初に来たのは五稜郭ごりょうかく政府の役人であった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
五稜郭ごりょうかく行というバスを見かけて乗る。何某講と染め抜いた揃いの手拭を冠った、盛装に草鞋わらじばきという珍しい出で立ちの婦人の賑やかに陽気な一群と同乗した。
札幌まで (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
神原内蔵之助という人は、維新の際に用人堀河十兵衛と一緒に函館へ脱走して、五稜郭ごりょうかくで戦死したそうですから、本人としては馬泥坊の罪をつぐなったと思っていたでしょう
半七捕物帳:58 菊人形の昔 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
幕府ばくふ海軍かいぐんのせきにんしゃだった榎本武揚えのもとたけあきも、この五稜郭ごりょうかくでとらえられたのでした。
津軽海峡つがるかいきょう、トラピスト、函館はこだて五稜郭ごりょうかく、えぞ富士ふじ白樺しらかば小樽おたる、札幌の大学、麦酒ビール会社、博物館はくぶつかん、デンマーク人の農場のうじょう苫小牧とまこまい白老しらおいのアイヌ部落ぶらく室蘭むろらん、ああぼくかぞえただけでむねおどる。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彰義隊しょうぎたいけいくさにおわったあと、幕府ばくふがわのひとたちは、東北地方とうほくちほうにのがれ、二本松にほんまつ会津若松あいづわかまつや、北海道ほっかいどう箱館はこだて函館はこだて)の五稜郭ごりょうかくなどで、官軍かんぐんにてむかい、つぎつぎにやぶれていきました。