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五分
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ごふん
五分の後病症はインフルエンザと
極つた。今夜
頓服を飲んで、成る
可く
風に
当らない様にしろと云ふ注意である。
「
五分あれば
間にあひませう。」
其處で、
別の
赤帽君の
手透で
居るのを
一人頼んで、その
分の
切符を
託けた。
けれども、
五分の
閑さへあれば
夫に
話される事を、
今日迄それなりに
為てあるのは、三千代の
腹の
中に、何だか
話し
悪い
或蟠まりがあるからだと思はずにはゐられなかつた。
殆ど、
五分置き
六分置きに
搖返す
地震を
恐れ、また
火を
避け、はかなく
燒出された
人々などが、おもひおもひに、
急難、
危厄を
逃げのびた、
四谷見附そと、
新公園の
内外、
幾千萬の
群集は
五分ばかりは無事であったが、しばらくすると、いつの
間にやら、黒い眼は
頁を離れて、
筋違に
日脚の伸びた
障子の
桟を見詰めている。——四五日藤尾に
逢わぬ、きっと何とか思っているに違ない。