乗上のりあが)” の例文
旧字:乘上
みち大畝おほうねりに、乗上のりあが乗下のりさがつて、やがて、せまり、やまきたり、いはほちかづき、かはそゝいで、やつと砂煙すなけぶりなかけたあたりから、心細こゝろぼそさがまたした。はいまみどりに、ながれしろい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
東北その他へ出る汽車には、みんながおしおしにつめかけて、機関車のぐるりや、箱車はこぐるまの屋根の上へまでぎっしりと乗上のりあがって、いのちがけでゆられていくありさまでした。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
転婆娘が、(あの、白菊と、私の黄ぎくと、どっちがいい、ええ坊や。)——礼さん、あなたが、乗上のりあがって、二階の欄干へ、もろ手を上げて、身もだえをしたとお思いなさい。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『はツ、』とふと一個ひとつちやう石高道いしだかみち石磈いしころ一本竹いつぽんだけ踏掛ふみかけた真中まんなかのが、カタリとあしおとてると、乗上のりあがつたやうに、ひよい、とたかつて、すぐに、ひよこりとまたおなたけ歩行あるす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)