並居なみい)” の例文
反対に、並居なみいる人々は、彼のすがたを仰ぐと、一斉に向き直って、縁にいた者は大地へ降り、たたずんでいた者は端へ寄って、地へひざまずき
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分のは実にがさつに引ったくるが早いかぐっとかぶって並居なみいる僧正大官を驚かしたことも、そして今、そのノウトルダムは巴里第一の名所として
かの玉をこめおき香花こうげを備え、守護神は八竜並居なみいたり、その外悪魚わにの口、のがれがたしやわが命、さすが恩愛の故郷ふるさとのかたぞ恋しき、あの浪のあなたにぞ……
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
バチンバチンと庭のを打つ騒ぎに、並居なみいる渡世人や百姓の面々は、すはこそ出たぞ、地震地震と取るものも取りあえず、燭台を蹴倒し、雨戸を蹴放けはなして家の外へ飛び出せば
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この橘の如何にも自信に満ちた言葉を聞くと、並居なみいる人々は、何とはなしに緊張した。
火縄銃 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
少佐は参謀総長以下並居なみいる上官に一渡り敬礼して、元気よく部屋を出ました。
計略二重戦:少年密偵 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
並居なみいる幕僚は、思わずハッと顔色を変えた。そして銘々めいめいまなこをギョロつかせて、室内を見廻した。もしやそこに、見馴みなれない新兵器がいつの間にやらはこびこまれていはしまいかと思って……。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
部屋には兵衛の妻焚野たくのをはじめ、兵衛にとっては叔父にあたる、竹原入道の娘の呉服くれはや、腰元などが並居なみいたが、宮家のお声の朗らかさと、その風采の尊げなのと、その容貌の端麗さにうたれ
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
世外侯せがいこうの額の筋がピカピカとすると、そりゃこそおいでなすったとばかりに、並居なみいる人たちは恐れ入って平伏する。そして小声で、悪いようには計らわないから、御尤ごもっともとうなずいてしまえとすすめる。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
萌黄もえぎや、金銀の縫箔ぬいはく光を放って、板戸も松の絵の影に、雲白くこずえめぐ松林しょうりんに日のす中に、一列に並居なみいる時、巫子みこするすると立出たちいでて、美女のおもていち人ごとに、式の白粉を施し、紅をさし
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、中門に並居なみいた郎党たちは、こう叫ぶと互いに刺し違えた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)