不知火しらぬひ)” の例文
暗夜にふなばたを打つ不知火しらぬひの光を見た。水夫が叩く悲しい夜半やはんの鐘のを聞いた。ちがつた人種の旅客を見た。自分の祖国に対するそれ等の人々の批評をも聞いた。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
はな眞紅まつかなのが、ゆる不知火しらぬひ、めらりとんで、荒海あらうみたゞよ風情ふぜいに、日向ひなた大地だいちちたのである。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
朝光あさかげ雲居くもゐ立ち立ち、夕光ゆふかげうしほ満ち満つ。げにここは耶馬台やまとの国、不知火しらぬひや筑紫潟、我がさとは善しや。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
行方跡無き不知火しらぬひ
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
切符きつぷつて、改札口かいさつぐちて、精々せい/″\きりすそ泥撥どろはねげないやうに、れた石壇いしだんあがると、一面いちめんあめなかに、不知火しらぬひいてたゞよ都大路みやこおほぢ電燈でんとうながら、横繁吹よこしぶききつけられて
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
青竹割り睾丸ふぐり締め込む不知火しらぬひ南筑紫みなみつくしのますらを我は
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
珊瑚さんごつて、不知火しらぬひ澄切すみきつたみづちりばめたやうである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)