不態ぶざま)” の例文
最初の一瞥では、この前とすこし身丈がちがうようであった。遠目にも猛々しい体躯で、不態ぶざまなほど肩幅が張りだし、猪首の坐りぐあいも妙である。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
客間の隅に胡桃材のずんぐりした書物卓デスクが据えてあるが、不態ぶざまな四本脚で立っている恰好がまったく熊そっくりだ。
その事務的な表情を見ては、さすがに豹一は続いて言葉が出ず、いきなり逃げだして、われながら不態ぶざまだった。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
「と云うことが云えるなら、俺の方にだって云分いいぶんはある。人形はお前へ渡したはずだ、あの時サッサと逃げ帰ったら、こんな不態ぶざまには逢わなかったはずだ」
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たい日本にほんをんなの足とたら、周三所謂いはゆる大根だいこんで、不恰好ぶかつかうみぢかいけれども、お房の足はすツと長い、したがツてせいたかかツたが、と謂ツて不態ぶざま大柄おほがらではなかツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
かれ容貌ようぼうはぎすぎすして、どこか百姓染ひゃくしょうじみて、頤鬚あごひげから、べッそりしたかみ、ぎごちない不態ぶざま恰好かっこうは、まるで大食たいしょくの、呑抜のみぬけの、頑固がんこ街道端かいどうばた料理屋りょうりやなんどの主人しゅじんのようで
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かれ容貌ようばうはぎす/\して、何處どこ百姓染ひやくしやうじみて、※鬚あごひげから、ベツそりしたかみ、ぎごちない不態ぶざま恰好かつかうは、宛然まるで大食たいしよくの、呑※のみぬけの、頑固ぐわんこ街道端かいだうばた料理屋れうりやなんどの主人しゆじんのやうで、素氣無そつけなかほには青筋あをすぢあらは
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「さて呼び止めて調べてみて、もし印籠がなかろうものなら、引っ込みのつかない不態ぶざまとなる。それにさ、疑いというようなものは、むやみと人にかけるものではない。困った困った困ったことになったぞ」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)