三国みくに)” の例文
旧字:三國
越州の三国みくにと、佐州の小木おぎと、羽州うしゅうの酒田とが、船箪笥を造った三港であることは前から聞いていた。だがうつる時が需用を消した。
思い出す職人 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ココロボチ 越前の三国みくに港附近で、石花菜すなわち「てんぐさ」をそういっている。この単語にはおかしい歴史がある。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
はるか北の三国みくにを越え、清水を越え、渋峠を越えて、例の“触れ不動”で急を知った越後新田の諸党も、手勢をつれて、それぞれに追いついて来た。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この他に、湖の温泉として片山津の温泉があり、更に越前に来て、蘆原の温泉があり、その向うに三国みくにの古い港があつたりしてちよつと行つて見るのに面白いところであつた。
女の温泉 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
東条の背後組織ブラック・チェンバー三国みくに機関というのがありますが、そこへ私の材料がだいぶ集っているらしい。あんなやつらに殺される気はないから、逃げだすんです。引継をすましたら、すぐ発ちます
ノア (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ちょうど、祥雲氏と同時代に私の宅にいた人で越前三国みくにの出身滝川という人を弟子にしました。これは毎度話しに出た彼の塩田真氏の世話で参った人であります。三年ばかり宅にいました。
八つが岳の山つづきにある赤々とした大崩壊おおくずれの跡、金峯きんぶ国師こくし甲武信こぶし三国みくにの山々、その高くそびえた頂、それから名も知られない山々の遠く近く重なり合った姿が、私達の眺望ちょうぼうの中に入った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そう思って見ると、この間少しばかり途絶とだえていたあやしの神楽太鼓が、またしても、三国みくにの裏山にあたって響きはじめたことです。そうして夜ごとに、山の奥へ奥へと響き進んで行くようです。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三国みくにだけを背にした阿弥陀沢あみださわの自然湯——。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
三国みくに港はその昔、船箪笥ふなだんすの産地として名がありましたが、千石船せんごくぶねすたれると共に、その歴史も終りました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
とすれば、次の七日には、上野こうずけと越後との国境、三国みくに山脈をも、はや踏みかけていたのではなかったか。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現に越前えちぜん三国みくにぼうという遊女俳人が、江戸に出て来て昔馴染むかしなじみの家を、遊びまわったという話などは、是からまた百年ものちのことである。多くの遊女は旅をして遠くからやって来ている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
産地は不明であるが、佐渡の産と云われ、処によっては「佐渡箪笥さどだんす」とも呼ばれる。もとより佐渡一ヶ所に限られたことはなく、羽前うぜん酒田さかた越前えちぜん三国みくにでも造られたようである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
六月、三国みくに越えを、彼のひきいる人馬は、奄々えんえんと、汗みどろに、北をさしていた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつは、敵大軍も、数量いかにも物々しくは聞ゆるが、三国みくに鈴鹿すずかなどの尾甲びこう山脈の嶮を越えて来た長途の兵だ。軍需、食糧などの荷駄隊が多くを占めていることも察知するにかたくない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家士のうちには旧知の朋輩ほうばいがたくさんいる。で、浅間山を左方に見ながし、三国みくに山脈をこえ、信濃川の水戸口みとぐち(現・新潟附近)から、弥彦やひこしょうへ入って、佐渡への便船を待つことにした。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうだ、三国みくに園阿御房えんあごぼうを訪ねてみよう」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
舟で北郡の三国みくに上陸あがった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)