一臂いっぴ)” の例文
どうか諸君も共に、この文明的運動の新手あらてとなって我々の働きに一臂いっぴの力を添えられんことを我輩は希望してまぬ(拍手大喝采)。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
その節は、亡父のよしみもあり、東海道愛好者としても呉々くれぐれ一臂いっぴの力を添えるよう主人に今から頼んで置くというのであった。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
願わくば再びこの地に来り日本仏教とチベット仏教との協同和合に一臂いっぴの力を尽し、幸いに世界仏教の基礎となるを得ば誠に愉快の事である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
自分は決して浮きたる心でなく真面目まじめにこの少女を敬慕しておる、何卒どう貴所あなたも自分のため一臂いっぴの力を借して、老先生の方をうまく説いて貰いたい
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「どんな内容か、お差支さしつかえなければ、話して下さらぬか。また場合に依っては、吾々のようなものでも、一臂いっぴのお力になる折がないとは限りませぬ」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もてアタマくだしに評し去るはあにに心なきの極ならずや我友二葉亭の大人うしこのたび思い寄る所ありて浮雲という小説をつづりはじめて数ならぬ主人にも一臂いっぴ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ふたたび家を東京にうつすに及び、先生ただちにまげられ、いわるるよう、鄙意ひい、君が何事か不慮ふりょさいあらん時には、一臂いっぴの力を出し扶助ふじょせんと思いりしが
そして初めて弟に一臂いっぴの力をすことのできる機会の来たことを悦んで、希望に満ち満ちて翌朝東京へ発った。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
南条力の主義や主張に共鳴して、一臂いっぴの力を貸すということであればまだ名分もあるが、事実は、どう言っても女のためであるのを争うことができません。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と頼むと、一力は一臂いっぴの力をかして彼をこの地に住みつかせて以来、何かと彼に目をかけてやり、その気の毒な立場をよく了解しているから、甚だ哀れに思って
もうこうなった以上は、すべてのことを打開けて、彼女のために一臂いっぴの力を致そうかとも思いはじめた。
好色破邪顕正 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
むしろ書をなげうち一臂いっぴを政治上に振うにかずとて、壮年後進の学生は争うて政治社会に入らざるはなし。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
私は冷然としてお前の惨死を見守ってこそいるだろうが、一臂いっぴの力にも恐らくなってはやらないだろう。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
願はくは一臂いっぴの力をかされよといふ。これも一理あり。今更ぐず/\言ひても仕方なしとて、一呼して城を抜きたり。その後、天庵は一度小田城をとりかへしたるが、再び三楽に取られたり。
秋の筑波山 (新字新仮名) / 大町桂月(著)
一臂いっぴの力を添えられんことを求めしかば、くだんの滑稽翁かねたり好事家こうずか、手足を舞わして奇絶妙と称し、両膚りょうはだ脱ぎて向う鉢巻、用意はきぞやらかせと、ひとしく人形室の前に至れば、美婦人正に刑柱にあり
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
爾来じらい別に交際を進めるという事もなく数年を過ぎ、明治二十一年に至って初めて我輩も君の事業に対して及ばずながら一臂いっぴの力を添える様な関係になった。
「おい、そんなに僕を侮辱ぶじょくしないで呉れよ。君がその気ならはばかりながら一臂いっぴの力を貸す決心でいるんだからね」
越年 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「いや、このたびの、御合戦には、及ばぬながらも、佐々成政、北陸にあって、一臂いっぴのお味方はいたしておる。さきに、その由は、徳川どのへ、ひそかに、密書いたしておいたが」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「持つべきものは友だ。よく来てくれた。どうか一臂いっぴの力をかしてくれ給え」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)