一突ひとつき)” の例文
アルツーの手にかゝりたゞ一突ひとつきにて胸と影とを穿たれし者も、フォカッチヤーも、また頭をもて我を妨げ我に遠く 六一—
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
理不盡りふじんなるいかり切先きっさきたゞ一突ひとつきにとマーキューシオー殿どの胸元むなもとをめがけていてかゝりまする、此方こなたおなじく血氣けっき勇士ゆうし、なにを小才覺ちょこざいなと立向たちむか
その胸のあたりを、一突ひとつき強くくと、女はキャッと一声いっせい叫ぶと、そのまま何処どことも知らず駈出かけだして姿が見えなくなった。
月夜峠 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
老人の顔には笑こそあれくるしみの様子は少しも存せざることを、一突ひとつきに、痛みをも苦みをも感ぜぬうちに死し去りたる証拠ならずや、余は実にう思いたり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
背中一面に一人は菊慈童きくじどう、一人は般若はんにゃの面の刺青ほりものをした船頭がもやいを解くと共にとんと一突ひとつき桟橋さんばしからへさきを突放すと、一同を乗せた屋根船は丁度今がさかり上汐あげしおに送られ
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
りますから、のどなり胸なり、ぐつと一突ひとつきつておしまひ遊ばせ。ええ、もう貴方は何を遅々ぐづぐづしてゐらつしやるのです。刀の持様もちやうさへ御存じ無いのですか、かうして抜いて!
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
うしろから背中を一突ひとつき刺されて川の中へのめり落ち、救上すくいあげられたものの息はもう切れていました。
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
目科は徐々そろ/\と其疑いの鎮まりし如く「そうさなア、矢張り血の文字は老人が書たのかも知れぬ」余はたちまち目を見開き「老人が左の手でかね、其様な事が有うかそれに老人がたゞ一突ひとつきで文字などを ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)