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もうざう
諸君も
御經驗であらうが
此樣な
時にはとても
眠られるものではない、
氣を
焦てば
焦つ
程眼は
冴えて
胸にはさま/″\の
妄想が
往來する。
足下は
昨夜はマブ
媛(夢妖精)とお
臥やったな!
彼奴は
妄想を
産まする
産婆ぢゃ、
町年寄の
指輪に
光る
瑪瑙玉よりも
小さい
姿で、
芥子粒の一
群に
車を
牽せて、
眠ってゐる
人間の
鼻柱を
横切りをる。
無論此樣な
妄想は、
平生ならば
苦もなく
打消されるのだが、
今日は
先刻から
亞尼が、
魔の
日だの
魔の
刻だのと
言つた
言葉や、
濱島が
日頃に
似ぬ
氣遣はし
氣なりし
樣子までが、
一時に
心に
浮んで
來て