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なりわた
蘆の
枯葉をぬら/\と
蒼ぬめりの
水が
越して、
浮草の
樺色まじりに、
船脚が
輪に
成る
頃の、
五位鷺の
搏ちやう。
又一しきり
烈しく
急に、
滑かな
重い
水に
響いて、
鳴渡るばかりと
成つたが。
送ける或日兩國邊より
歸る
途中俄に
夕立降來り
雷夥多敷鳴渡れども
雨具なければ馬喰町の馬場の
脇に
出格子の有る家を幸ひに
軒下に
立停り我が
宅も早二三町なれども歸ること
叶ず
雨に
濡て居るを
怨に
長き夜も
早晩更行き
早明六ツに間も有じとて切腹の用意に
掛らるゝに明六ツの
時計鳴渡れば越前守は
奧方に向ひ
悴忠右衞門切腹致さば其方
介錯致せ其方
自害せば予が
直に
介錯すべし予が切腹せば
介錯には大助致すべしと
言付て又忠右衞門に向ひ
最早時刻なるぞ
後れを