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ぢゆうばこ
大抵の
家では
米の
菱餅を
出すのが
常例であるが
勘次にはさういふ
暇がないのでおつぎは
僅に
小豆飯を
炊て
重箱を
持て
行つたのであつた。
お
勇さんの
家では
毎年酒を
造りましたから、
裏の
酒藏の
前の
大きな
釜でお
米を
蒸しました。それを『うむし』と
言つて、
重箱につめては
父さんのお
家へも
分けて
呉れました。
茶呑茶碗が
一つ/\に
置かれて、
何處からか
供へられた
芋や
牛蒡や
人參や
其の
他の
野菜の
煮〆が
重箱の
儘置かれた。
其處には
膳も
臺も
何もなかつた。
獨卯平は
杯を
手にしなかつた。
彼は
他の
老人に
先立つて
自分の
家の
重箱を
持つてぽさ/\と
歸つた。