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じやうしゆ
尋ねしに
此夫婦の者浪人せしは其頃越後高田の
城主松平越後守殿藩中にして
高二百石を
領し
側役を
勤し者なるが女房は同藩の娘にてお梅と
云て是も奧を
下りて
屏風のうちへ
入置平左衞門は
入牢申渡されしが主税之助儀は
交代寄合生駒大内藏へ御預けと
定まりたり此生駒家の
先祖は
讃州丸龜の
城主にして高十八萬石を
見れば、自分の爲に新しい
茶碗と
角の
箸までが用意されてあツた。周三は一
種暖い
情趣を感じて、何といふ意味も無く
悦しかつた。
冬曉早く
蓐を
離れて
斗滿川に
行き、
氷穴中に
結べる
氷を
手斧を
以て
破り(
此氷の
厚さにても
數寸餘あり)
身を
沒し、
曉天に
輝く
星光を
眺めながら
灌水を
爲す
時の、
清爽なる
情趣は