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さくらいろ
少し
高過ぎるくらゐに
鼻筋がツンとして、
彫刻か、
練ものか、
眉、
口許、はつきりした
輪郭と
云ひ、
第一櫻色の、あの、
色艶が、——
其が——
今の、あの
電車の
婦人に
瓜二つと
言つても
可い。
櫻色にもあらず、
緋桃の
花でもなし、
剃りたてたる
頭より
顏より
首筋にいたるまで
銅色の
照りに一
點のにごりも
無く、
白髮もまじる
太き
眉をあげて
心まかせの
大笑ひなさるゝ
時は
火影を
片頬に
受けた
妻の
顔は、
見恍れるばかりに
綺麗である。
頬もポーツと
桜色にぼかされて、
髪も
至つて
艶かである。
と
漸々盞がまはつて
参るに
従つて、二人とも
眼の
縁ほんのり
桜色となりました。小