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いうびんきやくふ
けたゝましく
郵便脚夫が
走込むのも、
烏が
鳴くのも、
皆何となく
土地の
末路を
示す、
滅亡の
兆であるらしい。
夕暮の
店先に
郵便脚夫が
投込んで
行きし
女文字の
書状一通、
炬燵の
間の
洋燈のかげに
讀んで、くる/\と
帶の
間へ
卷收むれば
起居に
心の
配られて
物案じなる
事一通りならず、おのづと
色に
見えて
眞中頃で、
向岸から
駈けて
來た
郵便脚夫と
行合つて、
遣違ひに
一緒になつたが、
分れて
橋の
兩端へ、
脚夫はつか/\と
間近に
來て、
與吉は
彼の、
倒れながらに
半ば
黄ばんだ
銀杏の
影に
小さくなつた。