みみ)” の例文
柱時計はしらどけいは、カッタ、コット、カッタ、コットと、たゆまずときをきざんでいましたが、きなれているので、かくべつみみにつきません。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
笠森かさもりのおせんだと、だれいうとなくくちからみみつたわって白壁町しろかべちょうまでくうちにゃァ、この駕籠かごむねぱなにゃ、人垣ひとがき出来できやすぜ。のうたけ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それから、この法師ほうしには、「みみなし法一ほういち」というあだ名がつき、びわの名手めいしゅとして、ますます名声めいせいが高くなりました。(昭2・6)
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
此中四個の表面へうめんには額の部に「一の字」形隆まり有り、また兩方りやうはうみみへんより顎の邊へ掛けて「への字」を倒さにしたるかたの隆まりも有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
うやうやしくあたまげているわたくしみみには、やがて神様かみさま御声おこえ凛々りんりんひびいてまいりました。それは大体だいたいのような意味いみのお訓示さとしでございました。
ところが、ふたりのにいさんは、またまた もんくをいいだしました。おうさまのみみが きこえなくなるくらいの大声おおごえで、わめきたてるのです。
また三尾みをの君加多夫かたぶが妹、やまと比賣に娶ひて、生みませる御子、大郎女、次に丸高まろたかの王、次にみみの王、次に赤比賣の郎女四柱。
アンドレイ、エヒミチはいてはいたが、みみにもとまらぬふうで、なにかをかんがえながら、ビールをチビリチビリとんでいる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ぼくねむとき、うつとりしてるときなんぞは、みみとこて、チツチツチてママなにかいつてかせますのツてさういふとね、⦅つまらない、そりやさへづるんです。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「ああ、このごろみみこえるこえぬがあってのオ。きんのはあさからみみなかはえが一ぴきぶんぶんいってやがって、いっこうこえんだった。」
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そろそろあししておやしろ縁先えんさきまでちかづいて、みみてますと、どこかで大ぜいさわいでいるおとこえました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
でもこのくらゐにくむべき言葉ことばが、人間にんげんくちことがあらうか? 一でもこのくらゐのろはしい言葉ことばが、人間にんげんみみれたことがあらうか? 一でもこのくらゐ
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ひきぬいたのは、二尺四寸の道中差どうちゅうざし、竹童はぎょッとしてはね返った。とすぐに、するどい太刀風たちかぜがかれのみみたぶから鼻ばしらのへんをブーンとかすった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうしてその体験がみみしたがうの心境を準備したのである。文句通り素直に解するに何のさまたげがあろう。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
生徒せいとたちも、それにつりこまれて、いつのまにか、そとのさわぎも、大砲たいほうおとにならず、講義こうぎみみをかたむけていました。そうして、やがて、時間じかんとなりました。
それはつくるのに大へんほねが折れたし、得意とくいなものであった。自分がどんなに芸術家げいじゅつかであるか見せてやりたかった。ゴットフリートはしずかにみみかたむけた。それからいった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
私も遠い昔では、からだ全体で物を見ていたかも知れぬ、あるいは背中で物をめていたかも知れぬ。みみはなしたと分業が行われ出したのは、つい近頃の事であると思います。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なに製造せいぞうするのか、間断かんだんなしきしむでゐる車輪しやりんひびきは、戸外こぐわいに立つひとみみろうせんばかりだ。工場こうば天井てんじよう八重やえわたした調革てうかくは、あみとおしてのたつ大蛇のはらのやうに見えた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
一生けんめいみみを立てた。父は、しきりに何やら言い張っているらしかった。ジナイーダは、いっかな承知しない。その彼女かのじょの顔を、今なおわたしは目の前に見る思いがする。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
江戸へ婿入りすることになりまして、柳生家重代じゅうだいのこけざる茶壺ちゃつぼ朝鮮渡来ちょうせんとらいみみこけざるという、これは、相阿弥そうあみ芸阿弥げいあみの編した蔵帳くらちょうにのっている、たいそう結構な天下の名器だ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ゆめかな‥‥とおもふと、空洞うつろたたくやうな兵士達へいしたちにぶ靴音くつおとみみいた。——あるいてるんだな‥‥とおもふと、何時いつにからないをんなわらがほまへにはつきりえたりした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
大に愉快ゆくわいの色をあらはし、つ未だみみにだもせざる「ぶらんでー」の醇良じゆんりやうを味ふを得、勇気いうきとみに百倍したり、じつに其愉快ゆくわいなる人をして雪点せつてんちかき山上にありて露宿ろしゆくするなるかをわすれしむ。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
なん圖星づぼしであらうが?……(ロミオらに對ひ)ようこそ! 吾等われらとても假面めんけて、美人びじんみみりさうなはなしさゝやいたこともござったが、あゝ、それは過去むかしぢゃ、とほい/\過去むかしぢゃ。
こんどは、ドアにぴったりとくっつくと、じっとききみみをたてた。
一様いちやうしろいぬみみそそがれる。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
世間せけん人々ひとびとは、このうわさをみみにするとおおさわぎでありました。そこにもここにも、あつまって金色こんじきうおはなしをしたのであります。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もぐりの流行神はやりがみなららぬこと、いやしくもただしいかみとしてんな祈願きがんみみかたむけるものは絶対ぜったいいとおもえばよろしいかとぞんじます。
「いいえ。らぬことはございますまい。先程さきほどかけなさるときおびんとやらおっしゃったのを、しん七は、たしかにこのみみきました」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
と、それからそれへとはなしつづけていきひまい、ドクトルはみみをガンとして、心臓しんぞう鼓動こどうさえはげしくなってる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そのあと何處どこしづかだつた。いや、まだだれかのこゑがする。おれはなはきながら、ぢつとみみませてた。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
するうちに自分じぶんもだんだんかれしてきて、いまのおかしらのおにのいったことばがみみはいると、自分じぶんもひとつして、おどりをおどってみたくなりました。
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
うさぎのみみは、あたまのところで、ビュウビュウ かぜになびきました。けれども、はりねずみのおかみさんのほうは、そのまま、そこに じっとしていました。
またごんごろがねは、ぼくたちのすぎでっぽうや、くさでっぽうのたまをどれだけうけて、そのたびにかすかなんだおと僕達ぼくたちみみをたのしませてくれたかれない。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
と、みみをやる生徒せいともあれば、ほんをおいて、いきなり、そとへとびだそうとする生徒せいともありました。
「しめた!」と、竹童は小さなからだをおどらせて、ピシリッと、燕作のみみたぶをぶんなぐった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「みんなねむつちやいかん‥‥」と、時時ときどき我我われわれ分隊長ぶんたいちやう高岡軍曹たかをかぐんそう無理作むりづくりのドラごゑげた。が、中根なかねばかりではない、どの兵士達へいしたちももうそれにみみすだけの氣力きりよくはなかつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
おかみさんは、全身ぜんしんみみにして、男の声を聞いていた。
みんみんみみのなし
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みみこけざる(発端篇)
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
だから、小僧こぞうがものをいう時分じぶんには、みみたぶがあかくなって、平生へいぜいでさえ、なんとなく、そのようすがあわれにられたのであります。
初夏の不思議 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かべとなり左官夫婦さかんふうふが、朝飯あさめしぜんをはさんで、きこえよがしのいやがらせも、春重はるしげみみへは、あきはえばたきほどにも這入はいらなかったのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
が、その場合ばあいわたくしには、うした神様かみさまのお言葉ことばなどはほとんどみみにもはいりませんでした。わたくしはいろいろの難題なんだいしてさんざん神様かみさまこまらせました。
馬吉うまきちがだまって大根だいこんを一ぽんいてわたしますと、おばあさんはみみまでけているかとおもうような大きな、くちをあいて、大根だいこんをもりもりべはじめました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
玄関げんかんから病室びょうしつかよひらかれていた。イワン、デミトリチは寐台ねだいうえよこになって、ひじいて、さも心配しんぱいそうに、人声ひとごえがするので此方こなたみみそばだてている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして二人ふたりみみをすましてきいていたが、余韻よいんがわあんわあんとなみのようにくりかえしながらえていったばかりで、ぜんそくちのたんのようなおとはぜんぜんしなかった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
でも諭吉ゆきちは、あきらめないで、あちこちたずねているうちに、みみよりなはなしをききました。
が、おも硝子戸ガラスど中中なかなかおもふやうにあがらないらしい。あのひびだらけのほほいよいよあかくなつて、時時ときどき鼻洟はなをすすりこむおとが、ちひさないきれるこゑと一しよに、せはしなくみみへはひつてる。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
王子おうじは、ここまでると、どこからか、いたことのあるこえみみはいったので、こえのするほうすすんでくと、ラプンツェルがぐに王子おうじみとめて、いきなりくび抱着だきついて、きました。
それより、たかまどの、やぶれしょうじが、かぜのふくたびに、かなしそうなうたをうたうので、どもは、じっとみみをすますのでした。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがてそのこえはだんだんちかくなって、ついくともなしに、みみにはいってきたのは、こういううたでした。
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)