うたが)” の例文
どるめんといふも、いしつくゑといふ意味いみ言葉ことばであります。このてーぶるのした人間にんげんはうむつたので、これはうたがひもなくはかであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
裾野にそよぐすすきが、みな閃々せんせんたる白刃はくじんとなり武者むしゃとなって、声をあげたのかとうたがわれるほど、ふいにおこってきた四面の伏敵ふくてき
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで、そのヴァードステーナ僧院そういん名声めいせいがおちてしまったら、いったい何がこの地方の評判ひょうばんを高めることになるだろうかとうたがった。
ほとんあやふかつたその時、私達は自らすくふために、十ぶんにそのちからうたがひをのこしながらも、愛とその結婚にかくを求めようとしました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ここばかりは、自分じぶんのまいたわざわいのすなかわみずがかからなかったのかとうたがいながら、そのいえまえをおそろしいかおをしてとおりました。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
じつまをすとわたしうたがつてゐるのです。しかもつとも、わたくし或時あるときなんもののやうなかんじもするですがな。れは時時とき/″\おもことがあるです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たゞさへ神仙しんせん遊樂ゆうらくきやうこと私共わたくしどもは、極端きよくたんなる苦境くきやうから、この極端きよくたんなる樂境らくきやう上陸じやうりくしたこととて、はじめはみづかゆめでないかとうたがはるゝばかり。
わたしはかれらがまた人の犬をなにか悪事に使うのではないかとうたがった。わたしの目つきから、父はもうわたしの心中を推察すいさつした。
受たる十三兩三分は勘辨かんべんするによりのこりの金を只今かへされよと云ふに文右衞門扨々聞譯きゝわけのなき男かな然れば是非ぜひに及ばず是を見てうたがひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お近さんが毒藥を盜み出したのを見て居るから、お内儀さんが毒害されたとなると、誰でも一應はお近さんをうたがつて見るだらう。
貴女あなたをおうたがまをすんぢやない。もと/\ふうれて手紙てがみですから、たとひ御覽ごらんつたにしろ、それふのぢやありません。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
戸山君は、一度博士に向かって、そのうたがいを口に出して話したことがあった。その時谷博士は、おだやかな微笑を浮かべていたのである。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
因つてうたがふ、孔子泰山たいざんの歌、後人假託かたく之をつくれるならん。檀弓だんぐうの信じがたきこと此の類多し。聖人を尊ばんと欲して、かへつて之がるゐを爲せり。
著者ちよしやはじ此話このはなし南洋傳來なんようでんらいのものではあるまいか、とうたがつてみたこともあるが、近頃ちかごろ研究けんきゆう結果けつか、さうでないようにおもはれてたのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
おのれをつるには、そのうたがいを処するなかれ。その疑いを処すればすなわちしゃもちうるのこころざし多くず。人にほどこすにはそのほうむるなかれ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
康頼 神をうたがってはいけません。熊野権現くまのごんげん霊験れいげんあらたかな神でございます。これまでかけたがんの一つとして成就じょうじゅしなかったのはありません。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
此織り物の經緯けいゐに用ゐたる糸は何より製せしや未だ明かならざれど、或る種類の植物線緯しよくぶつせんゐなる事はうたがふべからず。織り方は普通の布とは異れり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
この二首にしゆうたは、うたがひもなく、景色けしきんだうたであります。畝傍山うねびやま附近ふきんの、ちひさな範圍はんい自然しぜんうたつた、いはゆる敍景詩じよけいしといふものであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
また其前そのまへ改革かいかく淘汰たうたおこなはれるにちがひないといふうはさおもおよんだ。さうして自分じぶん何方どつちはう編入へんにふされるのだらうとうたがつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いや、せっかくよいこころで、そうしてとどけにたのを、へんなことをもうしてすまなかった。いや、わしは役目やくめがら、ひとうたがうくせになっているのじゃ。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「きみ、まだそんなことを言うのかい……ぼくはまちがいなくグリッフィンだよ。ゆっくり話せばうたがいははれるよ。信じてくれたまえ、ケンプ!」
カピ長 いや、なう、パリスどの、むすめあへけんじまする。れめは何事なにごとたりとも吾等われら意志こゝろざしにはそむくまいでござる、いや、其儀そのぎいさゝかうたがまうさぬ。
かれ奉公ほうこうして給料きふれう自分じぶんつひやしてころでは餘所目よそめにはうたがはれる年頃としごろの卅ぢかくまで獨身どくしん生活せいくわつ繼續けいぞくした。そのあひだかれ黴毒ばいどくんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
てきのわたしにただ一人ひとりともをさせて、少しもうたが気色けしきせない。どこまでこころのひろい、りっぱな人だろう。」
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
魯君ろくんこれうたがうて、呉起ごき(六九)しやす。呉起ごきここおい文矦ぶんこうけんなるをき、これつかへんとほつす。文矦ぶんこう李克りこくうていはく、『呉起ごき何如いかなるひとぞ』
ことに幾分でもあの高潔な武士の心事をうたがったのが、彼としては今さら良心に恥じられてしょうがなかった。
「人をうたがうことは日本人のもっともむところだ。だが、ぼくはドノバン君の態度たいどを見るに、なにごとかひそかにたくらんでいるように疑えてならないんだ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
此他このたに、四十一ねんの十ぐわつ、七八九三ヶにち、お穴樣あなさま探檢たんけん駒岡こまをかにとかよつた、其時そのときに、道路だうろ貝殼かひがらくのをて、何處どこ貝塚かひづかから持出もちだしたのかとうたがつてた。
我が抜苦ばつく与楽よらく説法せつぱううたがふ事なく一図いちづありがたがツて盲信まうしんすれば此世このよからの極楽ごくらく往生おうじやうけつしてかたきにあらず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
へば平常つねだてにるべきねがひとてうたがひもなく運平うんぺい點頭うなづきてらばきてくかへれ病人びやうにんところ長居ながゐはせぬものともにはなべなりとれてきなされと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ねんち二ねんうちには日本にほん經濟界けいざいかい基礎きそ安固あんこのものになるとふことを確信かくしんしてうたがはぬのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
さるに香央かさだが家の事は、神の四一けさせ給はぬにや、只秋の虫のくさむらにすだくばかりの声もなし。ここにうたがひをおこして、此のさがを妻にかたらふ。妻四二更に疑はず。
月より流るゝかぜこずえをわたるごとに、一庭の月光げつくわう樹影じゆえい相抱あひいだいておどり、はくらぎこくさゞめきて、其中そのなかするのは、無熱池むねつちあそぶのうをにあらざるかをうたがふ。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
太掖勾陳処処。薄暮毀垣春雨裏。〔太掖たいえき勾陳こうちん処処しょしょうたがう。薄暮はくぼ毀垣きえん 春雨しゅんううち
達二はしばらく自分の眼をうたがって立ちどまっていましたが、やはりどうしても家らしかったので、こわごわもっと近寄ちかよって見ますと、それはつめたい大きな黒い岩でした。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かれ処女作しよぢよさく市場しぢやうたとき、まだとしすくないこの天才てんさい出現しゆつげんおどろかされて、あつまつておほくの青年せいねんも、そろ/\かれ実質じつしつうたがはれてたやうに、二人ふたりり三にんはなれして
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
勿論もちろんなんこともなくうたがひだけでんだのだが、一おもはぬところかしてしまつた誰彼たれかれ、あまり寢覺ねざめがよかつたはずいが、なんでも物事ものごと先驅者せんくしや受難じゆなん一卷ひとまきとすれば
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
井戸ゐどふかかつたのか、それとも自分じぶんちるのがきはめてのろかつた所爲せゐか、つてからまはりを見廻みまはし、此先このさきうなるだらうかとうたがしたまでには隨分ずゐぶんながあひだちました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
わたしは「はてな。」と思った。と同時にうたがいと喜びとがごっちゃになってきだした。
容疑ようぎはぜつたいにかからないものときめていたのですが、そんなちいさな不注意ふちゅういがもとで、とうとううたがいがかかつたというのは、正直しょうじきなところ、まことに残念ざんねんでもあり、またわるいことは
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
ここに息長帶日賣の命、やまとに還り上ります時に人の心うたがはしきに因りて、喪船を一つ具へて、御子をその喪船に載せまつりて、まづ「御子は既に崩りましぬ」と言ひ漏らさしめたまひき。
大きなデカおやじが、自分の頭程あたまほどもない先月生れの小犬ののみんでやったり、小犬が母の頸輪くびわくわえて引張ったり、犬と猫と仲悪なかわるたとえにもするにデカと猫のトラとはなつき合わしてたがいうたがいもせず
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
った衣装いしょうというのなら、だれしょうとて、べつ邪間じゃまになるまいとおもわれる、そのおびだけに殊更ことさらに、夜寝よるねときまで枕許まくらもとつけての愛着あいちゃくは、並大抵なみたいていのことではないと、うたがうともなくうたがったのが
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
みだらがましき身振みぶりをば幽かにこころうたがひぬ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
と悪くうたがってこう申しあげました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ことうたがひなし、べつ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かみつばさうたがひし
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
おおくの人々ひとびとなかには、うみげてしまって、はたして、ふたたびまれわるだろうかといううたがいをもったものもおります。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
第十代だいじゆうだい崇神天皇すじんてんのうと、ぎの垂仁天皇すいにんてんのうころから、まへかくうしろまる前方後圓ぜんぽうこうえん立派りつぱ車塚くるまづかが、きづかれるようになつたことはうたがひありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
国賊だ、売国奴だ、うたがってみた日にゃあ、敵に内通をして、我軍の探偵に来たのかも知れない、と言われた処で仕方がないぞ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)