“頃(しばら)” の例文
居(を)ること之(これ)を頃(しばら)くして其母(そのはは)死(し)す。起(き)、終(つひ)に歸(かへ)らず。曾子(そうし)、(六六)之(これ)を薄(うす)んじて起(き)と絶(た)つ。起(き)乃(すなは)ち魯(ろ)に之(ゆ)き兵法(へいはふ)を學(まな)び、以(もつ)て(六七)〔魯〕君(きみ)に事(つか)ふ。〔魯〕君(きみ)之(これ)を疑(うたが)ふ。
頃(しばら)くして席は遊藝を競ふところとなり、ポツジヨは得意の舟歌(ふなうた)(バルカルオラ)を歌へり。我は友の笑(ゑみ)を帶びたる容貌(おもざし)の背後(うしろ)に、暗に富貴なる人々の卑吝(ひりん)を嘲(あざけ)る色を藏(かく)したるかを疑ひぬ。
曲曲回顧スレバ花幔(かまん)地ヲ蔽(おお)ヒ恍トシテ路ナキカト疑フ。排(おしひら)イテ進メバ則(すなわち)白雲ノ坌湧(ふんよう)スルガ如ク、杳(よう)トシテ際涯ヲ見ズ。低回スルコト頃(しばら)クニシテ肌骨皆香シク、人ヲシテ蒼仙ニ化セシメントス。
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
頃(しばら)くあつて藤井紋太夫の事があつた。隱居西山公が能の中入(なかいれ)に樂屋に於て紋太夫を斬つた時、清休は其場に居合せた。眞志屋の遺物寫本西山遺事の附録末二枚の欄外に、壽阿彌の手で書入がしてある。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)