雑魚寝ざこね)” の例文
旧字:雜魚寢
ナオミがそんなに堕落してしまっただろうか? 二人に関係があったとしたら、この間の晩の雑魚寝ざこねのような、あんな無耻むち
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
湿気払いを飲んで、羅漢らかん雑魚寝ざこねのように高鼾たかいびきになった寄子部屋の隅っこで、左次郎だけはマジマジと眼をあいていた。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当の左膳をはじめ何人あぶれ者が雑魚寝ざこねをしているかわからないから、両人といえどもうかつには踏みこめない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「あんな雑魚寝ざこねの宿のようなおっかさんの家にいては、蝶ちゃんの性格は害されるよ。しばらくでもいゝ、こゝへ移って来て、学校へでも何でもこゝから通い給え」
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あさっから晩まで人形いじくりをし通されてたまるもんか、ほかにも障るんです、五人六人と雑魚寝ざこねをする二階にあんなもの出放だしはなしにしておかれちゃあ邪魔にもなるね。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの小屋の中へ雑魚寝ざこねと来るだろうが、次第によっては今晩ひとつ、雑魚の魚交ととまじりというお裾分けにあずかって、その間に、地理上の心得万端を聞いて置くことだ——
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
男達三四人はそこに雑魚寝ざこねをする様子で、まだ床も敷きっ放しですが、何の変ったところもなく、倉松の荷物という、小さい竹行李たけごうりを、引くり返して調べたところでも
本当は、きょうから六日間、四年生の修学旅行なのだが、旅館でみんな一緒に雑魚寝ざこねをしたり、名所をぞろぞろ列をつくって見物したりするのが、とてもいやなので、不参。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
どちらかといえば人前でそんなことのきらいな修造は、誰か人が泊るときなど、いつも自分のふとんに雑魚寝ざこねして、茂緒を一人ねかすのに、倉島の前ではわざとらしく茂緒と共寝した。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
私と四人雑魚寝ざこね。古田先生、肘で私の横腹を押す。私、そのままグウグウグウ。
事件急迫のために、宿直室で雑魚寝ざこねをしていた係官一同は「カフェ・ネオンに第三の犠牲者現わる」という急報に叩き起されて、夜来やらいの睡眠不足も一時にどこへやら消しとんでしまった。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二十日間も風呂に這入らない兵士達が、高粱稈のアンペラの上に毛布を拡げ、そこで雑魚寝ざこねをした。ある夕方浜田は、四五人と一緒に、軍服をぬがずに、その毛布にごろりと横たわっていた。
前哨 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
おそらくこの老人とても、こうして雑魚寝ざこねの連中と同一の人種に違いない、とそのことは考えられたが、なお氏の頭には、老人の態度その他の、変に紳士的なところが理解できかねたのである。
地図にない街 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
深夜になって、一同、待合の一室で雑魚寝ざこねした。朝がきた。
勉強記 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「君ちょっと来たまえ、雑魚寝ざこねで」
それはあの、雨の降った晩に此処で雑魚寝ざこねをしたことがあったでしょう。あの晩僕は気がついたんです。………あの晩、僕はあなたにほんとうに同情しました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
降りこめられて、しょうことなしに離室いっぱいに雑魚寝ざこねしている月輪の残党四人をのぞきながら
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「はははは。いやそうか。万珠、浮舟、いっそ、そなたたちと、ここで雑魚寝ざこねといたそうか」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
島原で雑魚寝ざこねをしたくすぐり合いの雛妓すうぎの一人で、最後まで留り残されたあれだな、いや、最後に拾い物をしたあの子供の名が朝霧といったな、これが、もはや妄執となって
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そう言いながらも僕たちは、三日に一度はその若松屋に行き、そこの二階の六畳で、ぶっ倒れるまで飲み、そうしてつい雑魚寝ざこねという事になる。僕たちはその家では、特別にわがままがいた。
眉山 (新字新仮名) / 太宰治(著)
夜も大概お茶屋で泊つて、藝者や仲居と雑魚寝ざこねをする。その雑魚寝と云ふのが殺生せっしょうなもので、好きな女でも交つてゐると、終夜安眠が出来ないで明くる日まで頭がぴん/\する。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ささがこうしてついそれなりに、雑魚寝ざこねまくら仮初かりそめの、おや好かねえあけの鐘——。」
みんなで雑魚寝ざこねという事になり、奥さまも無理にその雑魚寝の中に参加させられ、奥さまはきっと一睡も出来なかったでしょうが、他の連中は、お昼すぎまでぐうぐう眠って、眼がさめてから
饗応夫人 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「ああ、雑魚寝ざこねよ」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あかす八軒家、雑魚寝ざこねをおこす網嶋あみじまの、告ぐるからすか寒山寺、………
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)