附加つけくわ)” の例文
何とかいう様な所謂いわゆる口惜くやしみの念ではなく、ただ私に娘がその死を知らしたいがめだったろうと、附加つけくわえていたのであった。
因果 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
それから一時間もして、約束通り波多野警部が再調べにやって来たが、ここに附加つけくわえる程の、別段の発見もなかった様子だ。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
うもへるさ』とつて三月兎ぐわつうさぎ附加つけくわへました、『「わたしふところのものこのむ」とつても、「わたしこのむところのものふ」とつてもおなことだ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
差出た意見を附加つけくわえたり何かしないのが、温厚を以て聞こえた山口老署長の本分みたような習慣になっていたのが、今度という今度ばかりは例外になって来た。
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そうして、附加つけくわえて言うことに、袁傪が嶺南からの帰途には決してこのみちを通らないで欲しい、その時には自分が酔っていて故人ともを認めずに襲いかかるかも知れないから。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
兎に角あの浴室の光景などは、其夜東方の丘の上の春の宮殿で催された宴楽の余興に較べたなら、殆ど記憶にも残らない程小規模のものであった事を附加つけくわえて置けば沢山です。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
我々われ/\仲間なかまでも、かうふところへひともあるのさ。KだのTだの。」わたし附加つけくわへた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「左様でございます」といってすぐ「先生のお部屋はここでございます」と附加つけくわえた。
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
単に冬子の口供こうきょう基礎どだいとして、其余そのよ好加減いいかげんの想像を附加つけくわえるだけの事である。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼女の事を知る信者仲間には、天罰だと云う者もある、と某氏は附加つけくわえた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私は毎日のように、そのどんな隅々すみずみまでもよく知っているはずだった村のさまざまな方へ散歩をしに行った。しかし何処へ行っても、何物かが附加つけくわえられ、何物かが欠けているように私には見えた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それをまた押返おしかへしてなに附加つけくわへるのもへんだつたのでれにはだまつてゐたが
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)